2018 年 59 巻 1 号 p. 3-12
加齢は,クローン性造血(clonal hematopoiesis)という現象をもたらす。加齢により,遺伝子変異に伴うクローン造血の存在が観察されるようになるが,血液学的異常が認められない場合はCHIP(clonal hematopoiesis of indeterminate potential)と称されている。近年のゲノム解析より,その原因となる特定の遺伝子変異も明らかになっている。CHIPは高齢者において高頻度となり,やがて造血器腫瘍発生の引き金となる。すなわちこのクローン性造血は造血器腫瘍のリスクを上げ,そのリスクはクローン性造血のないグループと比較すると10倍にも増加する。造血幹細胞の老化および腫瘍化のメカニズムが徐々に解明されつつあり,老化細胞を除去する(senolysis)効果も確認され,幹細胞老化の分野においては,今後の臨床応用が期待される。