2018 年 59 巻 1 号 p. 45-50
症例は35歳男性。29歳時に遺伝性球状赤血球症に対して脾臓摘出術を行った。1週間持続する全身倦怠感,右上腹部痛を主訴に来院し,著明な白血球,好酸球増加と肝逸脱酵素上昇,凝固異常に加え,門脈,上腸間膜静脈,右肺動脈,下大静脈等に多発血栓を認めた。上腸間膜動脈からurokinaseを持続投与し,recombinant thrombomodulinとheparinを併用したところ血栓は消失し,prednisoneにより好酸球数も抑制された。二次性好酸球増加の原因や,遺伝子異常は検索した範囲で指摘できず,特発性好酸球増加症候群に伴う多発血栓症と診断した。好酸球増加症候群において,血栓症の合併は多く報告されているが,門脈血栓症の報告は少ない。本症例においては好酸球増加による血栓傾向に加え,脾臓摘出術も門脈血栓症の一因となった可能性が考えられた。