臨床血液
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2 (EL1-4G)
転写因子ネットワークによる血液細胞分化の調節とその病態
加藤 浩貴五十嵐 和彦
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2018 年 59 巻 10 号 p. 1872-1879

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抄録

造血系は造血幹細胞が徐々に多分化能を失いつつ各成熟細胞へと分化することで構築されると理解されてきた。しかし最新の解析から,造血幹細胞分画が既に分化偏向の起きている不均一な細胞集団である可能性が指摘され,既存の階層的な血液細胞の分化モデルに再検討の必要性が提起されている。そもそも,同一のゲノム情報をもつ細胞が異なる成熟細胞へと分化するには,エピゲノム修飾も含めた転写制御で必要な遺伝子群を適切な時点で発現する必要がある。そこには,赤血球系細胞でのGATA1やミエロイド系細胞でのPU.1等の転写因子が分化の初期段階から重要な機能を有していると考えられてきた。しかし,それら転写因子自体の発現はどの様に調節されているのか,特定の成熟細胞へと分化方向が決定されるlineage commitmentは造血幹細胞からのどの時点でなされ,そこに転写因子の遺伝子発現やエピゲノム修飾がどう関わるのかという課題については未だ不明な点が多い。本稿では最新の研究成果を踏まえこれらの問題について考察する。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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