臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2018 (リンパ系疾患)―
小児急性リンパ性白血病
—病態研究と診療の新展開—
加藤 元博
著者情報
ジャーナル 認証あり

2018 年 59 巻 5 号 p. 504-510

詳細
抄録

小児急性リンパ性白血病(ALL)の治療成績は著しく向上したが,さらなる再発率の低下と合併症の回避に国内外で様々な取り組みがなされている。病態研究では,ゲノム解析技術の進歩により,ALL細胞に生じているゲノム異常を網羅的に検出することが可能となり,分子遺伝学的な観点からの病態の理解が進み,層別化因子や治療標的などへの応用が期待されている。また,従来はALL細胞に生じているゲノム異常に焦点が置かれていたが,生殖細胞系列の遺伝子変異が発症や臨床経過に関与していることも明らかになっており,ALL細胞だけでなく,患者側の因子まで統合して理解することが必要である。診療においては,微小残存病変の精密な測定による層別化治療の最適化と,分子標的剤や抗体医薬などの新規治療薬剤の導入が効果を発揮している。今後は,ゲノム医療と新規薬剤を標準治療の中にどのように組み入れていくのかを臨床試験を通じて検証する必要がある。

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top