2018 年 59 巻 6 号 p. 675-681
貧血を主訴に受診した81歳女性。血液検査にて大球性貧血を認めたが,血清ビタミンB12および葉酸値は正常範囲であった。骨髄検査では3系統に異形成を認め,当初骨髄異形成症候群(多血球系異形成を伴う不応性血球減少症 MDS-RCMD)と診断した。しかしながら末梢血の大球性貧血所見および過分葉好中球が目立ち,骨髄の巨赤芽球様変化も顕著であったことから,試験的にmecobalamin 1,500 µg/dayの経口投与を行った。投薬開始3週間後の血液検査は大球性貧血の改善をみとめ,以降ヘモグロビンは正常化し,末梢血の形態異常も消失した。後日の検索で抗内因子抗体陽性が判明し,最終的に悪性貧血の診断となった。抗内因子抗体陽性の悪性貧血では,自動測定系による血清ビタミンB12の偽正常もしくは偽高値例が報告されている。大球性貧血に対するmecobalamin試験投与は,診断的治療として有効な選択肢と考えられた。