臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
症例報告
網羅的遺伝子検査によって診断が確定した本態性血小板血症
柴田 翔北野 俊行岡本 吉央瀧内 曜子山本 和代田端 淑恵饗庭 明子吉田 裕治南谷 泰仁小川 誠司有馬 靖佳
著者情報
ジャーナル 認証あり

2019 年 60 巻 12 号 p. 1630-1634

詳細
抄録

60歳男性。2003年に血小板増多で受診。末梢血では赤血球数,白血球数は正常値で,骨髄検査では異形成を伴う巨核球の増生を認め,染色体G-band検査で5番染色体長腕の欠失(5q−)を指摘された。当初は骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)と診断し,血小板増多に対してaspirinとhydroxyureaによる治療を行った。経過中,5q−を検出するためにCSF1REGR1のFISH検査を提出したが陰性であった。2017年治療抵抗性となったため網羅的遺伝子検査を行った。5番染色体の欠失は5q14-5q23に存在し,5q−症候群の共通欠失領域(5q32-5q33領域;CSF1Rを含む)や高リスクMDSや急性骨髄性白血病の共通欠失領域5q31領域(EGR1を含む)とは異なる部位であると判明した。本症例ではCALR変異も判明したため本態性血小板血症(ET)の診断基準を満たしており,anagrelideを開始して血小板数の改善を認めた。網羅的遺伝子検査は正確な診断と治療に結びつく可能性が期待できると考えられた。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top