2020 年 61 巻 1 号 p. 11-19
Ph陽性急性リンパ性白血病の予後を改善するため,同種造血幹細胞移植後にチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を投与する報告が近年なされているが,投与が望ましい患者や投与方法など一定の見解は得られていない。今回,単一施設での移植後TKI投与について後方視的に解析を行った。予防的投与(pro)は8例,先制的投与(pre)は6例であった。観察期間中央値はpro 1,427(161~2,428)日,pre 773.5(156~2,243)日であった。Proでは非寛解期で移植が行われた1例が再発した。Preの4例はTKI投与のみで微小残存病変(MRD)陰性となった。2年全生存率はpro 85.7%,pre 100%であった。本解析では既報よりも低用量のTKI投与を行ったが,安全で有効である可能性が示唆された。