2021 年 62 巻 7 号 p. 760-765
全国調査は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の病態や予後の理解に重要な役割を果たしてきた。1980年代に診断されたATLを対象とした全国調査の結果,臨床病型分類の診断基準が提唱された。ATLの診療指針は現在もこの病型分類に基づいている。2000年から2009年に診断されたATLを対象とした全国調査でも,この病型分類の有用性は確認された。また,この調査では慢性型・くすぶり型ATLの新たな予後因子として可溶性インターロイキン2受容体が示された。2010年と2011年に診断されたATLを対象として我々が行った全国実態調査では,ATL発症年齢の中央値は68歳と,過去の報告と比較して高齢化を認めた。引き続いて行われた予後調査では,過去の報告と比較して,急性型とリンパ腫型では4年生存割合の改善を認めたが,慢性型とくすぶり型の予後は改善が乏しかった。今後も目的に応じた全国調査研究の実施が望まれる。