2022 年 63 巻 7 号 p. 770-775
症例は62歳女性。2014年に原発性マクログロブリン血症を発症し,rituximab治療により完全寛解を得た。2017年に四肢筋力低下および聴力障害が出現し,髄液のクローン性B細胞の増加やPET-CTにおける異常所見からBing-Neel syndrome(BNS)の診断を得た。大量cytarabine療法が奏効し寛解を得たが,2019年に2回目再発となり,bendamustine/rituximab療法により3回目寛解を得た。その3ヶ月後に3回目の再発となり,下肢筋力低下による歩行困難や尿閉など神経障害が進行した。2020年9月よりはtirabrutinibを導入され,神経症状は著明に改善し,画像上および髄液所見も含めて完全寛解を達成し,その後1年を超えて良好な経過を辿っている。BNSに対する治療選択肢は限られ,再発難治例に対するtirabrutinibの有効性を示した貴重な症例である。