臨床血液
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Symposium 10
造血幹細胞とリンパ球系前駆細胞を制御する分子の探索
—ESAMとSATB1の機能的重要性—
横田 貴史
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2022 年 63 巻 8 号 p. 906-917

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抄録

造血幹細胞は造血・免疫系を生涯にわたって支持するとともに,生理的変化に応じて必要な細胞を速やかに供給する,柔軟な増殖・分化能力を備えている。我々は,その能力の背景にある分子機構に関して,20年以上にわたって研究を継続してきた。造血幹細胞と早期リンパ球前駆細胞を高純度で分離する方法を開発し,造血幹細胞分画に優位に発現する分子として血管内皮関連分子ESAMを,早期リンパ球前駆細胞に優位に発現する分子として核クロマチン構造調節分子SATB1を同定した。ESAMは種を超えて造血幹細胞に発現しており,造血幹細胞に備わる根源的な性質の解析に有用であると考えられた。SATB1はTリンパ球の分化・成熟に重要な分子であるが,造血幹細胞の初期分化過程にも役割を担っており,老化現象にも関与していると考えられた。本稿では,造血幹細胞の特質について,ESAMとSATB1に関するこれまでの我々の研究成果を総括する。

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© 2022 一般社団法人 日本血液学会
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