臨床血液
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63 巻, 8 号
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症例報告
  • 迎 純一, 関谷 紀貴, 加藤 千賀, 酒井 知史, 中島 詩織, 村上 大介, 神原 康弘, 熱田 雄也, 小沼 亮介, 和田 敦司, 内 ...
    2022 年 63 巻 8 号 p. 849-854
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    60歳,女性。MDS/MPN-UにHLA8/8アレル適合の男性ドナーより非血縁者間同種骨髄移植を行った。Day29に好中球が生着し,異性間FISHはドナー型であった。赤血球と血小板が回復せず,その後好中球も低下した。発熱性好中球減少症で広域抗菌薬を長期投与していたが,day45,58の血液培養でStenotrophomonas maltophilia (SM)を検出した。造影CTで肺と両腎に敗血症性塞栓の所見を認め,播種性SM感染症と考え,感受性に従い抗菌薬治療を行った。血球は回復せず,二次性生着不全と判断し,day134に息子よりHLA半合致末梢血幹細胞移植を行った。Day11に好中球生着し,遅れて赤血球と血小板も生着した。SM菌血症の再燃もなく,day63に退院した。好中球減少時のSM菌血症は予後不良だが,感受性に従った抗菌薬治療と救援移植で救命することができた。

  • 坂田 真規, 佐分利 益穂, 河野 克也, 高田 寛之, 宮崎 泰彦, 長松 顕太郎, 蒲地 綾子, 大塚 英一
    2022 年 63 巻 8 号 p. 855-859
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    症例は28歳,男性。心窩部痛を契機に多発リンパ節腫大および多発節外腫瘤を認め,右腋窩リンパ節生検にてALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL),stage IVBと診断された。BV-CHP療法(brentuximab vedotin,cyclophosphamide,adriamycin,prednisolone)6コース後,左肺門上部リンパ節病変が残存し,同部位に一致したFDG集積を認めた。BV-CHP療法を2コース追加したが,病変は残存し,代謝学的部分奏効であった。残存病変に対してalectinib 600 mgを開始し,3ヶ月後には代謝学的完全奏効を達成した。明らかな有害事象はなく,現在も投与継続中であり,代謝学的完全奏効を維持している。本例は,alectinibが奏効し,有害事象もなかったが,至適投与期間や長期投与による有害事象は明らかでなく,さらなる症例の蓄積が必要と考えられる。

  • 山本 陸雄, 周山 拓也, 吉澤 有紀, 清水 美咲代, 黒田 章博, 品川 篤司
    2022 年 63 巻 8 号 p. 860-864
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    症例は56歳男性。47歳時にCBFB-MYH11を伴う急性骨髄性白血病(AML with inv(16)(p13.1;q22); CBFB-MYH11)を発症し,地固め療法施行中に再発し非血縁間同種造血幹細胞移植施行し長期寛解を維持していた。移植9年後に右精巣に疼痛を伴う腫瘤が出現し精巣摘除術にてmyeloid sarcoma(MS)と病理診断した。精巣腫瘍検体を用いたfluorescence in situ hybridization法にてCBFBを介したinv(16)陽性細胞を確認しAMLのMS再発と診断。PET-CTで右肩にFDG集積を伴う皮下腫瘤を認め精巣同様にMS病変と判断,骨髄再発は認めなかった。AMLに準じた再寛解導入療法,地固め療法に加え対側精巣と肩部腫瘤に放射線治療後にHLA一致非血縁間同種造血幹細胞移植を施行。移植後2年以上血液学的寛解を維持し腫瘤形成も認めていない。同種移植後に骨髄再発を伴わないMS再発は単発が多く,複数でも単一臓器,単一領域の報告が多い。本症例のような遠隔部位での複数再発においても全身化学療法に加えて局所制御を追加することは長期の腫瘍制御につながる可能性があると考えられた。

  • 内田 智之, 藤井 高幸, 大原 慎, 今井 唯, 井上 盛浩, 原田 結花, 原田 浩徳, 萩原 政夫
    2022 年 63 巻 8 号 p. 865-869
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    症例は80歳男性。倦怠感を主訴に近医を受診したところ汎血球減少症を認めた。末梢血塗抹標本はリンパ球優位で芽球は認められなかった。骨髄穿刺は吸引困難のため,骨髄生検を施行し,低形成骨髄で線維化も認められ,芽球割合からMDS-EB2の診断に至った。骨髄検体でのG-band分染法で7番染色体の欠失を認めた。さらに次世代シークエンス法でSAMD9 W22*(VAF 51.22%)が確認された。頬粘膜検体においても同様の所見が得られたため,生殖細胞系列変異と判断された。SAMD9はMIRAGE症候群や小児期に生じるMDSの原因遺伝子の1つとして報告されている。本症例ではSAMD9のほぼ全長にわたる欠失であるため機能喪失型変異と考えられた。SAMD9 W22*を生殖細胞系列変異として有するMDS症例の報告はこれまでにない。

  • 横山 慶人, 大東 寛幸, 宮島 徹, 宮下 直樹, 岡田 怜, 長谷川 祐太, 杉田 純一, 小野澤 真弘, 橋本 大吾, 豊嶋 崇徳
    2022 年 63 巻 8 号 p. 870-875
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    Bing-Neel症候群(BNS)はWaldenströmマクログロブリン血症(WM)にリンパ形質細胞の中枢神経浸潤を伴う稀な病態である。難治性BNSに対してブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬であるtirabrutinibを使用し長期奏効を得た症例を経験したので報告する。症例は46歳男性。2019年9月,両手の震え,嘔気,排尿障害を主訴に近医を受診し,脳脊髄MRI検査で異常を指摘された。炎症性脱髄疾患と判断されステロイドパルス療法を施行されたが,ステロイド漸減により再発を繰り返したため血液疾患の精査目的で2020年6月に当科紹介となった。骨髄と髄液中に異常リンパ形質細胞を認め,髄液細胞のMYD88L265P遺伝子変異が陽性であり,BNSと診断した。2020年7月よりBR療法を開始したが治療抵抗性であり,2020年8月にWMに対して保険適用となったtirabrutinibの内服を開始した。特記すべき有害事象を認めず,ステロイド治療からの離脱と長期奏効を得た。BNSに対するtirabrutinibの奏効を示した報告は本症例が2例目であり,今後の症例の集積が待たれる。

短報
第83回日本血液学会学術集会
Symposium 3
Symposium 4
  • —T細胞異常を中心に—
    石田 文宏
    2022 年 63 巻 8 号 p. 893-898
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    後天性赤芽球癆(PRCA)に関する知見は本邦では難治性疾患克服事業:特発性造血障害に関する調査研究班を中心に集積されてきたがPRCAの病態は不明な点も多い。日本血液学会血液疾患登録を利用した解析で後天性PRCAの本邦での新規発症は年間100例程度と推定された。年齢中央値は73歳で,特発性PRCAが7割を占めていた。また,PRCA2016研究より,PRCAの貧血の性状として三分の一の例では大球性貧血であることが判明した。特発性PRCA,大顆粒リンパ球性白血病関連PRCA,胸腺腫関連PRCAの3病型ではT細胞異常が指摘されている。後天性PRCA 90例の解析で,病型によりその頻度は異なるものの,クローン性T細胞とSTAT3変異とが関連して生じており,また,一部の例ではVβ1セグメント利用への偏りが認められていた。特定の細胞障害性T細胞によるPRCAの免疫病態への関与を示唆する結果であった。

  • 細川 晃平, 中尾 眞二
    2022 年 63 巻 8 号 p. 899-905
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    HLAクラスIアレル欠失血球(HLA欠失血球)はHLA欠失造血幹前駆細胞が細胞傷害性T細胞(CTL)からの攻撃を免れて産生することから,再生不良性貧血(AA)がCTLによって起こっていることを示している。HLA欠失血球陽性のAA患者では,HLAクラスIアレルのexon1に,異なるHLA間で共通するナンセンス変異(Exon1変異)が高頻度にみられることが最近の我々の研究により明らかになった。ddPCRによるExon1変異の検出は骨髄不全の免疫病態の診断に重要なツールと考えられる。本邦におけるHLA欠失血球陽性AA患者を長期間観察したところ,HLA欠失血球や併存する異常クローンの存在はMDS/AMLへの移行とは関連しないことが分かった。また,HLA欠失血球の存在は,免疫抑制療法中止後の二次性PNHへの移行のリスクを低下させることも示唆された。以上のようにHLA欠失血球の検出は,AA患者の病態把握や治療方針の決定に重要な役割を果たすと考えられる。

Symposium 10
  • —ESAMとSATB1の機能的重要性—
    横田 貴史
    2022 年 63 巻 8 号 p. 906-917
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    造血幹細胞は造血・免疫系を生涯にわたって支持するとともに,生理的変化に応じて必要な細胞を速やかに供給する,柔軟な増殖・分化能力を備えている。我々は,その能力の背景にある分子機構に関して,20年以上にわたって研究を継続してきた。造血幹細胞と早期リンパ球前駆細胞を高純度で分離する方法を開発し,造血幹細胞分画に優位に発現する分子として血管内皮関連分子ESAMを,早期リンパ球前駆細胞に優位に発現する分子として核クロマチン構造調節分子SATB1を同定した。ESAMは種を超えて造血幹細胞に発現しており,造血幹細胞に備わる根源的な性質の解析に有用であると考えられた。SATB1はTリンパ球の分化・成熟に重要な分子であるが,造血幹細胞の初期分化過程にも役割を担っており,老化現象にも関与していると考えられた。本稿では,造血幹細胞の特質について,ESAMとSATB1に関するこれまでの我々の研究成果を総括する。

  • 山下 真幸
    2022 年 63 巻 8 号 p. 918-927
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    造血幹細胞は生涯にわたって血液細胞を供給し,造血系の恒常性維持や再生に必須の細胞である。そのため,造血幹細胞には様々なストレスに晒されてもその数および質を維持する様々なメカニズムが備わっていることが知られている。一方,クローン性造血は体細胞変異を獲得した造血幹細胞クローンによって生じる病態であり,造血器腫瘍や心血管疾患の重要なリスク因子として注目されている。一般に変異細胞は主要組織適合性遺伝子複合体を介してネオ抗原を提示した場合,それを特異的に認識するT細胞によって選択的に排除されうるが,この仕組みが造血幹細胞プールの質的制御に寄与するか否かについては不明な点が多い。そこで本稿では,造血幹細胞の数と質を制御する仕組みについてこれまでの知見を概説するとともに,造血幹細胞とT細胞の直接的な相互作用を示唆する最新の知見について紹介し,その破綻が造血器疾患に及ぼす影響について考察する。

女性医師キャリアシンポジウム
  • —育児とキャリアの振り返り—
    齋藤 明子
    2022 年 63 巻 8 号 p. 928-933
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    大学時代のスキー事故による長期入院経験を通して血液内科への入局を決めた。大学院で生物統計と臨床試験方法論を学び,臨床試験の立ち上げから総括報告書作成まで一連の業務を経験し,当該品目は移植前処置薬として適応取得された。ダナファーバーがんセンターでは,Stephanie Lee先生の下でアウトカムリサーチを学んだ。キャリアの早い時期に人生のロールモデルに出会えたことは幸運であった。転機となった名古屋異動に際し,Stephanie先生から“That which does not kill you makes you stronger.”という諺で背中を押してもらい,帰国後は,日本小児がん研究グループのデータセンター整備をはじめICH-GCP準拠の国際共同研究を実施するための基盤整備を行った。子育てをしたい時期と色々学び経験してキャリアを積みたい時期が重なり,試行錯誤しながら過ごしてきたが,人との出会いに支えられたように思う。

  • 長村 登紀子
    2022 年 63 巻 8 号 p. 934-936
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    ジャーナル 認証あり

    2021年度年次総会では,「多様な女性医師のキャリアについて考える」と題した女性医師キャリアシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは,男女問わず後輩医師の参考になればと,一人の女性医師としてのキャリアを紹介した。研究や仕事,人生は長い登山の上り坂であり,谷間が存在する。いまだ道半ばであるが,アカデミアから企業へ技術移管時の谷間は,アカデミア側の製造能力・品質や安全性を高めることによって,また,結婚や子育て時期の谷間は,家族や環境によって,さらに仕事における独自性と個々の存在価値の追求によって埋めていければと考える。

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