2023 年 64 巻 1 号 p. 18-22
51歳男性。3年以上の経過で徐々に進行する手袋靴下型のしびれを契機に受診した。IgM型M蛋白血症と形質細胞様B細胞の骨髄浸潤を認め,リンパ節腫大と脾腫を伴っており,原発性マクログロブリン血症(Waldenström’s macroglobulinemia, WM)と診断した。神経伝導検査で脱髄主体の神経障害を認めた。血清抗ミエリン関連糖タンパク質(MAG)抗体は陰性であった。腓腹神経生検でミエリンの菲薄化を認め,脱髄主体の病態が示唆されたが,一部に軸索障害所見と神経上膜から周膜への腫瘍細胞浸潤を認めた。Rituximab+bendamustine療法によってIgMは正常化したが,神経伝導検査所見,しびれ症状は部分的な改善に留まった。WMにおける末梢神経障害の合併は一般的だが,腫瘍の末梢神経浸潤が証明された例は稀であるため,文献的考察を加え報告する。