2023 年 64 巻 1 号 p. 49-53
再生不良性貧血(AA)は自己免疫に伴う造血不全症であるが,次世代シークエンス技術の発展により,AAの病態には遺伝子変異を有するクローン性造血が関わっていることが明らかとなってきた。今回我々は,治療中に造血巣がASXL1変異を有するクローン造血で置換された症例を経験したので報告する。症例は慢性糸球体腎炎にて維持透析中に汎血球減少を認めた58歳の男性。骨髄は著明な低形成性骨髄でMRIでも脂肪性変化を認め重症AAと診断し,維持透析を行いながら抗胸腺細胞グロブリン(ATG),cyclosporin,顆粒球コロニー刺激因子,eltrombopagにより加療開始した。治療開始3ヶ月後,romiplostimへ変更したところ,徐々に造血回復を認め輸血依存から離脱した。遺伝子変異解析の結果,ASXL1変異クローンで造血は置換されていることが判明したが,治療後2年経過しても寛解を保っている。