2023 年 64 巻 10 号 p. 1306-1313
骨髄線維症の平均生存期間は5年程度とされ,現時点では,薬物療法による治癒は困難であり,同種造血細胞移植が唯一の根治的治療法である。骨髄線維症の臨床経過や予後は均一ではないことから,個々の症例において移植関連死亡,長期予後などを考慮し,疾患リスク・急性白血病への移行リスクの評価や,遺伝子変異情報を含めて,移植適応や移植時期についての検討が必要である。これまでの報告から,同種造血細胞移植は骨髄線維症の治癒的治療となり得ることが示されている。しかし,移植関連死亡率が30~50%と高く,総生存率は40%程度にとどまっている。JAK2阻害薬は,骨髄線維症の予後を改善することが明らかにされつつあり,JAK2阻害薬と同種造血細胞移植をどう使い分けていくか検討が求められる。また,今後は,高い移植関連死亡をどう改善していくか,幹細胞ソースの選択,至適な移植前治療の開発,JAK2阻害薬を移植前にどう組み込んでいくかなどが今後の解決すべき課題である。