2023 年 64 巻 11 号 p. 1470-1476
キメラ抗原レセプターT(CAR-T)細胞療法は,本邦でも2019年3月にtisagenlecleucelが承認を得て以降,急速に臨床の現場で適応される症例が増えてきた。CD19に対するCAR-T療法を中心に臨床経験が積み上がり,当初想定されたよりも安全に行える治療であることがわかってきた一方で,その治療効果の限界も明らかになってきている。CD19CAR-T療法を受けた症例の50%ほどは,のちに再発・再燃をきたしており,目下の最大の問題は不十分な治療効果であると言える。その原因は,CAR-T細胞の疲弊・エフェクター機能の不足,標的抗原の陰転化,腫瘍の増生速度が極端に早い,などに大別され,それぞれに対して対策が研究・開発されている。これに加えて,今後の新規CAR-T療法の発展も望まれる。本稿ではこれらの問題点についての現状と今後の展望について我々の取り組みをまじえて論じる。