2023 年 64 巻 2 号 p. 91-96
62歳男性。貧血(Hb 8.2 g/dl)で精査入院。溶血性貧血を認め,試験管法直接クームス試験を施行し陰性であった。しかし依然として自己免疫性溶血性貧血(AIHA)が疑われたため,カラム法直接クームス検査,赤血球結合IgGの高感度法定量を施行し温式AIHAの確定診断を得た。また,来院時より急性腎障害(AKI)を併発しており,補液のみでは改善に乏しかったため腎生検を施行した。腎生検の結果,ヘモグロビン円柱による急性尿細管障害を認め,AIHAによる溶血が原因で発症したAKIと考えられた。AIHAの確定診断後,prednisoloneを投与し,2週間ほどで貧血と腎障害は改善を得ており,現在も改善を維持している。AIHAによる溶血が原因でAKIを生じる報告は非常に少なく,また早期のステロイド投与により腎保護に成功した貴重な症例として報告する。