2023 年 64 巻 8 号 p. 719-730
ASXL1は骨髄増殖性疾患において高頻度に変異が認められる遺伝子である。ASXL1変異により変異型ASXL1蛋白質が発現する。私たちは野生型ASXL1が相分離を引き起こす蛋白質であり,膜のないオルガネラ(membraneless organelles, MLOs)であるパラスペックルの形成に関与することを明らかにした。骨髄系腫瘍で認められる変異型ASXL1は相分離に関わる天然変性領域(intrinsically disordered region, IDR)を欠損しており,パラスペックルの形成を有効に補助できないことも見出した。さらに変異型ASXL1を発現するマウスの造血幹前駆細胞ではパラスペックルの形成が障害されており,骨髄再構築能低下の一因となっていることを示した。本稿では近年生物学の分野で注目を集める相分離やMLOsの概念について解説し,筆者らの研究成果を含めて最新の知見を紹介する。