2026 年 67 巻 6 号 p. 622-633
多発性骨髄腫(MM)の治療成績は,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,抗CD38抗体に加え,CAR-T細胞療法や二重特異性抗体など免疫療法の導入により,20年間で飛躍的に向上した。近年は初発から4剤併用療法が用いられ,深い奏効と長期生存が期待されている。一方,MMは再発を繰り返す疾患であり,三系統治療抵抗例では依然として予後不良である。免疫療法は再発難治例の治療成績を改善する一方で高額であり,医療費増大と医療制度の持続可能性が課題となっている。費用対効果分析(CEA)は,質調整生存年(QALY)を用いて医療介入の価値を定量的に評価する手法である。本稿では,免疫療法の有効性と費用対効果を概説し,初発4剤併用療法および再発難治例に対するCAR-T療法の経済性を自験研究を含めて検討するとともに,臨床現場の治療選択と意思決定に資する視点を整理し,将来の持続可能な治療戦略を考察する。