抄録
明治時代から1970年代まで、日本の林政学の教科書・概説書にはある程度共通の考え方に基づく定義や構成が見られた。その考え方とは、林政学を大要、①森林や林業が国家や国民経済のなかで占める地位・役割を明らかにし、②そのために国家がなすべき施策を明らかにする学問と見なすものだった。社会や経済の単位として国家と国民を重視するこの林政学(以下、古典林政学と呼ぶ)は、1990年代以降の政策と研究の展開のなかで時代遅れになり、2000年代以降の教科書・概説書では顧みられなくなった。同時に、古典林政学に見られた定義の明確さ、構成との対応関係、それらを含む説明の体系性も薄れた。小論はこのように日本林政学の歴史を概観したうえで、体系的な説明がもつ価値と、林政研究としての古典林政学の方法論上の特徴および意義を論じ、最後に古典林政学の考え方を一般化して時代の変化に即して応用する可能性を示した。