2022 年 28 巻 p. 211-216
河川水辺の国勢調査(以降水国調査)への環境DNA(以降eDNA)実装に向け,ダム湖内の魚類相を捉えるための最適な採水方法を検討するため,ダム湖の水国調査地区である流入部と湖岸部,水質調査地点である湖心部を比較した.流入部と湖岸部では,水国捕獲種数・個体数ともに流入部のほうが高かった.湖岸部におけるeDNAによる検出状況では,湖岸部のみで捕獲された種は,湖岸部・流入部双方で捕獲された種よりも有意に低かった.また,湖岸部で捕獲された種のうち,大型のサケ科魚類,小型のコイ科魚類,底生魚はeDNAで検出されにくい傾向を示した.これらのことから,ダム湖では,eDNA含有物質の面的な拡散範囲が狭く,生物の分布範囲の近傍で採水する必要があると考えられた.流入部で採水したサンプルへの流入河川の影響は小さかったことから,水国調査にeDNAを実装する際には,流入部を基本地点とするとともに,魚類の日周行動なども考慮しながら,追加の採水地点を設定することが望ましいと考えられた.