2022 年 28 巻 p. 31-36
本研究は,計画規模以下から想定最大規模までの多段階の洪水外力を効果的に想定するための知見を得ること,複雑な氾濫形態を有する谷底平野部における超過洪水時の氾濫現象の特徴を考察すること等を目的とする.霞堤等の不連続堤防や河道に沿った複数の氾濫ブロックを有し,複雑な氾濫形態が想定される木曽川水系長良川の谷底平野区間を対象に,河道―氾濫解析統合モデルを構築し,10年確率~想定最大規模までの洪水波形計50ケースを外力とした氾濫解析を実施した.解析結果を分析した結果,谷底平野に流入する各河川の流量配分により浸水面積に大きいばらつきが生じるのに対し,下流区間へのピークカット効果のばらつきは相対的に少ないことが示された.16の氾濫ブロック別の浸水面積を分析した結果,氾濫水の貯留の量と貯留(氾濫)が生じるタイミングが4パターンに分類でき,複雑な氾濫形態を有する谷底平野区間における氾濫現象が下流に与える影響を分析的に提示できることが示された.