2024 年 30 巻 p. 23-28
瀬や淵,たまり,ワンドなどの生息場は,洪水や土砂の移動によって形成され,その規模や頻度に応じて創出,維持,消失する.しかし,生息場に生息する生物の時間的・空間的な変化の特性を経時的に追跡し,定量的に明らかにした研究はほとんどない.本研究では,天竜川16.0k周辺を対象に,生息場の履歴と採取調査による50種の底生動物の関係を分析し,種毎に利用している生息場の分布パターンや洪水の影響を把握した.また,底生動物の空間的・時間的な応答を把握するため,生息場寿命及び生息場齢という新しい概念を用いて,生息場寿命及び生息場齢と生物多様性の関係について考察を行った.その結果,洪水に対する底生動物の応答は,多くの種は通常の生息場から一時的に異なる水理条件の生息場に避難するように利用している可能性があることを示した.また,底生動物の種数は,洪水規模や生息場齢及び生息場齢によって多様な応答を示すことを把握し,洪水撹乱の環境下において,生息場齢が多様な生息場が存在することが底生動物の多様性を維持する上で重要で役割を果たしている可能性があることを示した.