2024 年 30 巻 p. 17-22
仔アユの流下実態調査は一般にプランクトンネットを用いた採捕により実施されるが,採捕によるアユ資源への 影響や夜間作業時における安全確保の観点から,環境DNA分析による代替が期待されている.本研究では,卵及び仔アユからの環境DNA放出の有無,及び河川中の環境DNA濃度と仔アユ流下数との相関を野外調査及び実験によって検討し,仔アユ流下量推定における環境DNA分析の有効性を検証することを目的とした.孵化前の卵から環境 DNAは検出されず,卵膜を破いた卵からは高濃度のDNAを検出した.仔アユからは環境DNAが検出され,容器への仔アユ投入数とDNA濃度は高い相関を示した.一方で,現地で観測した仔アユの流下数と環境DNA濃度に相関は見られなかったほか,仔アユ流下密度から推定される孵化卵及び仔アユ由来の環境DNAの占める割合は小さかった.以上より,仔アユ以外の環境DNA発生源により産卵場直下での環境DNA濃度から仔アユ流下量の推定することは困難であることが示唆された.ただし,産卵場と採水地点に十分な距離があり,流下仔アユが放出する環境DNAのみを考慮できる条件であれば,環境DNA濃度と仔アユ流下量が相関する可能性がある.