2024 年 30 巻 p. 489-494
地球温暖化に伴い気象イベントが極端化し,多くの河川流域で洪水や渇水などの災害が頻発化している.気候変動下での水資源量については,河川流量に対して蒸発散量の影響が大きいことが指摘されている. しかし,これらについて具体的な流域の物理環境特性を考慮し,また,流域の利水計画に基づき評価した例は少ない.本研究では,温暖化が流域に与える影響を水資源管理の指標により評価することを目的とする.そのため,流域における流出量や水温などを追跡できるモデルを構築し,モデルの検証によりその妥当性を確認した.また,温暖化予測値を用いた長期流出解析を行い,気候変動下での流況・位況の変化に着目した.その結果,4°C上昇下では年降雨量の変動幅が大きく,蒸発散量も2°C上昇に比べ増加傾向にあるため年平均流量は減少傾向にあることが示された.さらに,これまでに経験した渇水流量を下回る頻度を見ても,過去実験・2°C上昇実験よりも増加する傾向にあることが明らかとなった.