2024 年 30 巻 p. 495-500
低地に人口・資産が集中する円山川流域の豊岡盆地を対象に,計画的氾濫域の選定手法を検討し,流域全体の経済被害額を踏まえた計画的氾濫の治水効果を評価した.計画氾濫域候補を複数選定し,各々に200m越流堤を設定した.2つの洪水波形と3つの超過洪水(1/100, 1/150, 1/200確率規模)の組み合わせにおいて,異なるケース(現状,堤防切り下げ1-4m)での氾濫解析を行った.治水経済調査マニュアル(案)に基づき家屋と農地の単位面積あたり被害額を求め,最大浸水面積から流域全体の経済被害額を推定した.1候補のA地区では,堤防高の切り下げと共に洪水ピークカット量が増え,この地区の家屋の分布が山際小段上であったため浸水被害が限られ,切り下げとともに豊岡市街地を含む流域全体の経済被害額が低下した.一方,B地区では洪水貯留効果は認められたが,この地区の家屋の分布が自然堤防上であったため計 画的氾濫による浸水被害が切り下げとともに増え,流域全体の経済被害額も増大した.これらは,氾濫域を適切に選定することで超過洪水時の経済被害を抑えうることを示すものである.