2024 年 30 巻 p. 623-628
1959年9月に襲来した伊勢湾台風は,強風,高潮と洪水により日本列島各地に甚大な被害をもたらした.本研究では,長期・広域浸水に見舞われた伊勢湾沿岸の被災地域を多面的に分析するため,高潮・洪水により決壊した海岸・河川堤防の復旧過程に着目した.濃尾平野における浸水分布と決壊堤防の仮締切工事記録に時空間情報を付与することによって,長期・広域浸水の解消過程を分析するとともに,地理情報システムによる復旧過程の可視化を試みた.その結果,堤防決壊地点の洗堀深が深くなるほど,工事着手が遅れるほど,また,労務人員が多くなるほどに,仮締切の工期は長期化するという関係性が見出された.これは,決壊堤防の背後に広がった浸水域が陸上交通を制限したために,工事着手に時間がかかったほか,多くの資材や人員による人海戦術を余儀なくされて工事費が嵩んだことと対応していた.また,長期浸水の多くは干拓地で発生したが,その復興過程において被害が甚大だった沿岸地域は高い盛土地へと改変され,その前面に新たな埋立地が造成された様子が確認された.