河川技術論文集
Online ISSN : 2436-6714
六角川高水敷に設置された湛水池群による洪水水位低減効果の評価
後藤 勝洋今村 正史片渕 公淑福岡 捷二
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2025 年 31 巻 p. 277-282

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抄録

六角川中下流部は感潮河川であり,高水敷に繁茂したヨシが洪水流の大きな抵抗となるため,河道の流下能力が不足し水位上昇に伴う内水氾濫が課題となっている.高水敷に湛水池を設置することで,ヨシの繁茂を抑制し洪水水位を下げる対策が検討されている.本研究は,令和3年8月六角川洪水を対象に洪水流解析を行い,湛水池群による洪水水位低減効果を評価した.湛水池の機能は,高水敷の流量を増加させヨシの倒伏を促すことにより,低水路と高水敷の流量配分を変え,河道全体で洪水流を流れ易くすることにある.六角川中流部の湛水池の水位低減効果は,水面幅全体で受け持つため,令和3年8月洪水に対して-5~-15cm程度であるが,その効果は湛水池の設置されていない区間を含む広範囲に及ぶ.これらの効果は高水敷が冠水する流量で機能し始め,湛水池の流れが発達する増水期に卓越すること,これにより計画高水位を超過する時間を0.5~2時間程度短縮させることになる.さらに,湛水池は維持管理に優れ,新たなワンド環境の創出効果と合わせて,ヨシが繁茂する低平地河川の治水と環境の調和にも寄与している.

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