2025 年 31 巻 p. 97-102
大規模な洪水の流量を得ることは,高水計画への活用や被災実態把握・対策検討等の観点から重要である.一級河川安倍川では令和4年9月台風第15号により,基準地点手越において氾濫危険水位を超過する大規模な洪水が発生したが,本洪水では,浮子流量観測は作業員の安全確保から中止した.このため,洪水時流況の動画から表面流速を得るSTIV法に加え準三次元流況解析を活用した再現検証により流量を推定した.再現検証は,実績降雨から貯留関数法により流量ハイドロを算定し,これを境界条件とした準三次元流況解析を用いて,手越地点の観測水位と右岸側のみで得られたSTIV法による観測表面流速を検証材料として行った.河床の粗度係数は,安倍川が網状の複雑な流況を呈する特性を踏まえ,局所的な水深に対応する河床波から推定される値を与えた.これらの試行の結果,観測水位と観測表面流速を再現するに至ったことから,本流況解析の与条件とした流量ハイドロは確からしいと判断された.本報告は,地形,雨量,水位,部分的な表面流速という限られた観測データから流量を推定する一手法を提示するものである.