2026 年 32 巻 p. 73-78
近年,治水と河川環境の調和の実現に向けて,「生物の生息・生育・繁殖の場」に関する定量的な目標設定が求められている.魚類の生息場評価における従来手法であるPHABSIMは,内水面漁業の最重要種であるアユを対象とした生息場評価に広く適用され,一定の有効性が示されている.しかしながら,実際の生息分布と有意な相関が認められない事例もあり,生息適地評価手法の高度化が求められている.そこで本研究では,山口県佐波川下流域を対象に環境DNA分析を実施し,PHABSIMの精度検証および,一般化線形モデル(GLM)を用いた新たな生息場予測モデルの開発に向けた基礎的検討を行った.その結果,流速,水深を用いたPHABSIMによる評価がアユの生物量を一定程度予測可能であることが確認されたものの,水理特性以外のリーチスケールにおける環境要因を考慮した一般化線形モデル(GLM)を用いた生息場予測モデルの方が高精度であることが明らかとなった.これにより,生息場適地評価の精度向上には,局所的な水理特性のみならず,リーチスケールの環境要因を組み込むことの重要性が示された.