2022 年 14 巻 p. 184-191
テニスでは理論上,得点の重要度がポイントカウント毎に異なるが,特定のプレーヤーの特徴に着目した研究は見当たらない.そこで,本研究では男子シングルス世界ランキング1 位のノバク・ジョコビッチ選手のサービスゲームにおける各ポイントカウントの重要度について明らかにすること,そして,その特徴からジョコビッチ選手の課題を見出すことの2 つを目的とした.分析対象とした試合は2018 年1 月から2020 年1 月にハードコートで行われたデビスカップ,グランドスラム,ATP ツアーファイナルズ,マスターズ1000 の67 試合(176 セット,827 ゲーム,4,761 ポイント)であった.その結果,各ポイントカウントの重要度は得点率が状況によらず一定と仮定した場合の理論値と概ね類似した傾向を示したが0-40 では理論値よりも低くなるという特徴が明らかになり,0-40 からでは得点しても理論値よりも11.7%低い割合でしかゲームを取得できないという課題を抽出することができた.さらに,重要度が高い5 カウントにおいて,得点できればゲーム取得率が高くなるにもかかわらず得点率が低くなる傾向にあるという課題が抽出された.