スポーツパフォーマンス研究
Online ISSN : 2187-1787
14 巻
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
  • 橋本 恒, 柴原 基, 来田 宣幸, 野村 照夫
    2022 年 14 巻 p. 335-347
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,スポーツ選手における梨状筋拘縮を伴う非特異的腰痛に対する継続的な他動的運動療法(PT)と自動的運動療法(AET)の効果を明らかにすることを目的とした.被験者は非特異的腰痛者の内,梨状筋拘縮を伴っているスポーツ選手とし,PT のみを週1 回行うPT 群8 名と,PT に加えてAET を毎日行うPT+AET 群8 名とした.測定項目は梨状筋の弾性率平均値(Emean),最大値(Emax),SLR,FABER およびNRS の5 つとし,各測定項目で介入前後の数値と各週における数値の差を分析した.結果,それぞれの群で各週において介入前後で有意差が見られた.週ごとの比較ではPT 群では各測定項目で大きな変化は見られなかったが,PT+AET 群では,Emean,Emax,FABER およびNRS について,実験開始3週目以降で実験開始時との有意差が見られた.SLR については,実験開始4 週目以降で実験開始時との有意差が見られた.本研究によりPT のみでは機能・主観的評価ともに介入の1週間後には介入前の数値に戻る事が明らかになった.また,PT に加えAET を3 週間程度毎日実施させることで症状の改善が見込まれる.
  • 大山 泰史, 青柳 領, 八板 昭仁, 田方 慎哉, 小牟礼 育夫, 川面 剛, 案浦 知仁, 長嶺 健
    2022 年 14 巻 p. 317-334
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル オープンアクセス
    バスケットボール選手は,その練習環境やポジッション,男女別の試合の経験を通して,必要なルールの理解度に違いが見られるという仮説のもとで,バスケットボールを専門に競技する選手を対象に,そのルールの理解の構造を明らかにし,それらと所属,性,ポジションとの関連を検討する.対象はバスケットボールを競技する全国レベルの3 大学に所属する234 名で,72 問のルールテストの中から類似した内容の問題をまとめた14 項目を対象に,主因子法,バイコーティミン法による斜交解の因子分析を行った.さらに,それらから得られた因子得点と,所属チーム,ポジッション,性との関連をt検定と分散分析によりその差を検定した.さらに,他の諸要因間との関連を一定にした上で,当該要因との関連を検討するために数量化理論Ⅰ類を用いた.そして,次のような結果を得た.1)選手によるルールの理解という観点から因子構造の解釈を行うと「F1:頭上での攻防に関するルールや様々なファウルの理解」「F2:攻撃時間に関するルールやシュート場面でのファウルの理解」「F3:ボールの争奪とゲームクロックが止まった時のプレイに関するルールの理解」「F4:5 秒ルールとボールの所有に関するルールの理解」の4 つの因子が抽出され,一部の項目が2 つの因子に同時に有意な因子パターンを示す複合的な因子構造を示した.2)各因子に最も大きな影響を与えるのは,性で,「F1:頭上での攻防に関するルールや様々なファウルの理解」は,男子の方が女子よりもルールを理解していた.また,「F2:攻撃時間に関するルールやシュート場面でのファウルの理解」と「F3:ボールの争奪とゲームクロックが止まった時のプレイに関するルールの理解」は,女子の方が男子よりもルールを理解していた.3)「F4:5 秒ルールとボールの所有に関するルールの理解」は,どの項目とも関連が見られず,ポジションについては,どの因子とも関連が見られなかった.
  • 陸上競技短距離400m 選手を対象とした事例研究
    清水 悠, 勝部 裕三郎, 伊藤 千紀, 西村 三郎
    2022 年 14 巻 p. 305-316
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/27
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,陸上競技短距離400m 選手1 名を対象に,ハムストリングスのI 型肉離れ受傷から競技復帰に至る一連のリハビリテーション期間において,受傷部位の筋力回復,心情の変化やトレーニング内容を事例的・包括的に追跡することで,競技復帰に向けたトレーニングの示唆を得ることを目的とした.肉離れ受傷から競技復帰までの72 日間において,Cybex を用いた膝関節屈曲・伸展筋力,痛みの主観的評価や股関節の可動域などを縦断的に調査した.対象選手は,早期に競技復帰ができ,復帰した400m 走レースで再受傷することなく大学ベストを更新した.本事例から,以下の示唆が得られた.①安静期間から鍼治療を受けることで早期に軽負荷なトレーニングが再開できる,②自転車エルゴメーターを用いたミドルパワートレーニングがスピード持久能力の向上に寄与できる,③ Cybex を用いた膝関節屈曲伸展筋力比や左右差の評価が競技復帰の目安になる,④競技会に出場することではじめて心理的な恐怖心が払拭できる可能性がそれぞれあること,また,⑤復帰競技会で再受傷せずに高いパフォーマンスを発揮するためには,レース前半の最大疾走速度を抑え,後半型のレースパターンを展開することが挙げられる.
  • 道下 慈英, 中島 孝寛, 八重嶋 克俊, 衣笠 竜太
    2022 年 14 巻 p. 298-304
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,セーリング競技のフルハイクアウトの姿勢を模したハイクアウトテストを実施し,その持続時間および下肢への負担の観点から,フルハイクアウトの有効な足首の使い方を明らかにすることを目的とした.足関節を背屈させ舟状骨上にフットベルトをかけるフォーム(NAV)と,足関節 を底屈させ中足骨上にフットベルトをかけるフォーム(MET)でのハイクアウトテストを行い,持続時間と膝関節伸展筋群の筋活動電位(EMG)を比較した.EMG の電極は内側広筋(VM),外側広筋(VL),および大腿直筋(RF)の筋腹に貼付した.MET の持続時間(95 ± 18 秒, 平均値と標準偏差)は,NAV の持続時間(73 ± 20 秒)よりも有意に長かった.全ての対象者は股関節角度を維持できなくなったことにより測定終了したことから,フルハイクアウトの持続時間を決定するのは股関節屈曲筋群の筋持久力であると考えられる.しかし,フォームによる各筋のEMG に有意な違いは認められなかった.股関節屈曲にも寄与するRF に関して,フォームに関わらず,時間経過に伴うEMG の振幅が増大することが確認された.以上のことから,フルハイクアウトの姿勢を長時間持続させるフォームとして,足関節を底屈させるMET が有効であると示された.
  • 後方かかえ込み宙返りとの比較を通して
    細川 史裕, 中川 康二, 岩野 華奈
    2022 年 14 巻 p. 286-297
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    チアリーディング競技のバスケット・トス技には,「後方かかえ込み宙返り」や,より難易度の高い「後方かかえ込み宙返り開脚姿勢入れ(以下「エックスアウト」とする)」がある.そして,さらなる高難度技として「エックスアウトにひねりを加えた技」がある.これらの技における習得過程は,「後方かかえ込み宙返り」から「エックスアウト」,さらに「エックスアウトにひねりを加えた技」のように,難易度の低い順が一般的となっている.本研究は,指導現場での一例としてチアリーディングの熟練トップポジション選手1 名を対象に,「後方かかえ込み宙返り」と「エックスアウト」の運動自己観察をまとめ,モルフォロギー的観点から比較考察をした.そして,「後方かかえ込み宙返り」から,「エックスアウトにひねりを加えた技」を可能とする「エックスアウト」を習得するための知見を得ることを目的とした.その結果,引き上げ局面,あふり局面,ひらき局面,入れ局面において運動差異がある可能性を示すことが出来た.
  • バックスクワットを対象として
    飯田 祐士, 前田 明
    2022 年 14 巻 p. 277-285
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,セット間に行うスタティックストレッチング (SS) が,多関節エクササイズ ( バックスクワット) における複数セットの力発揮および柔軟性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.健康な成人男性7 名に対し,12 回× 4 セットのバックスクワットのセット間に,殿筋群,大腿四頭筋へ各30 秒間のSS を実施した.そして5 セット目として実施した疲労困憊に至るまでのバックスクワットの回数と,試行前後の柔軟性を測定した.その結果,セット間に安静を保つ対照条件と比較して,5 セット目の挙上回数が増加し,試行前後の柔軟性も維持された.したがって,バックスクワットにおける複数セットのセット間に行うSS は,トレーニング効果を向上させる可能性が示唆された.
  • 髙橋 仁大, 柏木 涼吾, 岡村 修平, 大澤 啓亮, 村上 俊祐
    2022 年 14 巻 p. 267-276
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    本研究は,大学女子テニス選手1 名を対象に,サービスのパフォーマンス向上を目的とした取り組みとその効果を事例的に検討したものである.対象とした女子選手は,比較的身長が高く,サービスを自身の武器として認識しており,そのパフォーマンスをさらに向上しようとする意欲を持っていた.指導者は対象とした選手のサービスの能力について高く評価しており,そのパフォーマンスをより良くすることを目指した.サービスのパフォーマンスを向上するための主な取り組みとして,技術面の具体的目標は1st サービスのスピードを上げることと,2nd サービスの回転数を増やすことを目指すものであった.およそ5 ヶ月間の取り組みの中では,スイングスピードを向上することや,回転数を増やすためにスイングの方向やラケットとボールの当て方を修正することなどを試みた.取り組みの前後で,対象選手の1st サービスのスピードは速く,2nd サービスのスピードは遅くなっていた.2nd サービスの回転数は大きくなる傾向にあった.また打点の高さが有意に低くなっており,1st サービスのスピードの向上に貢献していると考えられた.2nd サービスの回転数の増加には技術的課題の克服が貢献していると考えられた.
  • マンチェスター・シティFC の戦術に着目して
    上林 大志, 森 寿仁
    2022 年 14 巻 p. 256-266
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,ペップ・グアルディオラ監督が体系化した5 レーン理論に基づいたハーフスペースを利用したサッカー戦術の特徴を明らかにすることを目的とした.対象試合はイングランドプレミアリーグおよびヨーロッパチャンピオンズリーグなどの18 試合とし,ペップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティFC の対戦試合11 試合およびその他のチーム同士の代表的な試合7 試合とした.そして,ハーフスペースを利用した戦術に関わると考えられる13 項目を試合映像から分析した.その結果,マンチェスター・シティFC はペナルティエリア(PA)内への侵入回数が多く,PA 内のハーフスペース(ポケット)でボールを受ける動きが多いことが明らかとなった.一方で,ポゼッションによる攻撃戦術であるため,PA 侵入前の守備選手が多いことも明らかとなった.これらのことから,ハーフスペースを利用した戦術を取ることでPA 内に多く侵入でき,シュート機会にも恵まれやすいが,守備選手が多いために難易度の高いシュート状況となり,シュートを打つ選手(フィニッシャー)のシュート能力が重要となる戦術であることが明らかとなった.
  • 全国トップレベルの大学生剣道選手を対象として
    阿比留 萌, 中本 浩揮, 亀井 誠生, 幾留 沙智
    2022 年 14 巻 p. 243-255
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    多くのスポーツ選手が試合前には不安を感じるにも関わらず,その不安にどのように対処しているかに焦点を当てた研究はこれまであまりなされていない.そこで本研究は,練習期から試合当日までの不安の変化に焦点を当て,全国トップレベルの大学生選手が不安にどのように対処して試合に臨んでいるのかを明らかにすることを目的とした.対象者は,これまで試合で実力発揮をしてきたと考えられる全国トップレベルの大学生剣道選手2 名とした.スポーツ場面に特有な不安の変化について測定したほか,不安の変化に伴う行動と思考を分析するために,稽古日誌の記入を求めた.その結果,対象者1 は不安を感じやすいタイプであることが示されたほか,試合前には最大で10 日前から不安を感じていたのに対し,対象者2 は調査期間全体を通して不安を感じていなかった.このように,両者の不安は相反していたが,両者は調査期間中に行われた試合において共通して実力を発揮することが出来ていた.そして不安への対処法については,両者の日誌における相違点より,対象者1 はあえて練習において出来なかった点に焦点を当てることで,試合に向けての入念な準備を可能にし,その結果としてモチベーションを高めることで実力発揮につなげていた可能性が明らかとなった.つまり,不安を減らすことよりも,不安がパフォーマンスに良い影響を及ぼすように,うまく活用していくことが重要であると考えられる.
  • 塩入 彬允, 牛山 幸彦, 佐藤 悠樹
    2022 年 14 巻 p. 234-242
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    卓球競技の技術・戦術要素である飛行特性,回転特性に関する研究は進められているが,配球特性に関する研究はあまり進められていない.本研究では,右利きシェークハンド攻撃型の男子大学生選手1 名を対象に14 試合分の分析を行い,得点に影響のある配球を明らかにし,選手へのアドバイスや練習メニューの立案に活用可能か検討することを目的とした.方法は,6 つの超音波センサとデジタルビデオカメラを用いて試合中のボール落下位置を収集し,ABC 分析とコレスポンデンス分析を行った.結果,ABC 分析では,対象とした選手における得点に影響のある配球と課題である配球が明らかとなり,戦術変更や練習メニュー立案に活用可能であることが示唆された.コレスポンデンス分析では,配球データから得られた2 次元マップを作成し,対戦相手に対して関係性が強い配球が視覚的に把握できることが明らかとなった.今後の課題は,回転方向や打法等の要素を加えて分析を行い,詳細な試合の分析を行うことが可能か検証していくことが望まれる.
  • 1955-2020 年における広島県100 m走ランキングの記録推移からみた現状課題
    田村 孝洋, 松田 亮
    2022 年 14 巻 p. 223-233
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,地域スポーツ発展のためアスリートにおけるパフォーマンス推移の分析から現状課題を明らかにして,今後のサポート体制構築について考察することであった.分析対象は広島陸上競技協会が1955-2020 年に集計した男子100m 走のランキングデータ660 個であり,年代や年齢を基に区分してパフォーマンス推移の詳細を分析した.その結果,タイムは11.59 ± 0.25s(1955s),10.90 ± 0.21s(1990s),10.72 ± 0.12s(2015s)と時代と共に向上していた.しかし,実質的には1990s までは向上していたが1995s 以降のタイムに有意差はなく停滞していた.また,ランキングを構成する年齢の中心は高校生(55.4%,1955-1990 年)から大学生(50.8%,1995-2020 年)に移行していた.ランキング獲得回数から推測できたパフォーマンス維持の年限は3 年間から4 年間と短いことが課題と言え,今後は社会人アスリートでも競技を継続できるようなサポート体制の構築が必要だと考えられる.
  • 加藤 貴英, 髙津 浩彰
    2022 年 14 巻 p. 209-222
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では甲子園出場を目指す高校野球選手の3 学年にわたる心理的競技能力の縦断的変化を検討した.3 校(5 チーム)の硬式野球部員109 名を対象に,心理的競技能力検査(DIPCA: Diagnostic Inventory of Psychological Competitive Ability for Athletes)を各高校の春季大会終了後(5 ~ 6 月)に毎年実施した.109 名全員を1 群とした縦断的変化では,3 年生時に「自己実現意欲」下位尺度が低下したが,その他の因子と下位尺度においては顕著な変化は見られなかった.3 年生時にベンチ入りしたレギュラー群(64 名)とそうでないノンレギュラー群(45 名)に分けて比較した場合,レギュラー群の心理的競技能力はノンレギュラー群よりも高かった.レギュラー群は1 年生時から高いレベルの心理的競技能力を3 年生時まで維持したのに対し,ノンレギュラー群は「競技意欲」因子が3 年生時に低下した.レギュラー群の縦断的変化をチームごとで確認すると,ポジティブな変化を示すチームばかりでなくネガティブな変化を示すチームもあった.また,同じ学校でもその年のチームによって心理的競技能力の縦断的変化の様相は異なった.
  • 2 シーズン間比較における踏切4 歩前からのストライド制限の有効性の検証
    品田 直宏
    2022 年 14 巻 p. 192-208
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,国内トップレベルの男子走幅跳選手が,走幅跳の助走における踏切4 歩前を「近い」と感じる位置に接地することが,踏切準備局面におけるオーバーストライドを抑制し,踏切に向けたリズムアップを引き出すことで踏切準備局面の課題である減速を抑えるアプローチ方法となり得る可能性があるとの仮説を基に,意図的に踏切4 歩前の接地距離を短くすることを試みた2010 年シーズンと,その前年となる2009 年シーズンの踏切4 歩前からの助走速度推移,動作の比較を行い,その仮説の有効性を検証したものである.2010 年シーズンでは踏切2 歩前の速度は低下していたものの,踏切1 歩前では2009 年シーズンと遜色のない助走速度が達成されると共に,2 歩前から1 歩前にかけて加速をするこれまでとは異なる速度推移を見せ,速度低下の少ない踏切準備を行なえていた.また,遊脚の引き付け速度が高く,高いピッチで踏切に向かえていた.これらのことから,本研究の被験者においては踏切4 歩前の接地位置を意図的に短くし,「踏切4 歩前からのストライド制限」を行うことが,速度低下を抑えた効果的な踏切準備動作を引き出す有益な方法になり得ることが示された.
  • 板橋 クリストファーマリオ, 村上 俊祐, 髙橋 仁大
    2022 年 14 巻 p. 184-191
    発行日: 2022/08/22
    公開日: 2022/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    テニスでは理論上,得点の重要度がポイントカウント毎に異なるが,特定のプレーヤーの特徴に着目した研究は見当たらない.そこで,本研究では男子シングルス世界ランキング1 位のノバク・ジョコビッチ選手のサービスゲームにおける各ポイントカウントの重要度について明らかにすること,そして,その特徴からジョコビッチ選手の課題を見出すことの2 つを目的とした.分析対象とした試合は2018 年1 月から2020 年1 月にハードコートで行われたデビスカップ,グランドスラム,ATP ツアーファイナルズ,マスターズ1000 の67 試合(176 セット,827 ゲーム,4,761 ポイント)であった.その結果,各ポイントカウントの重要度は得点率が状況によらず一定と仮定した場合の理論値と概ね類似した傾向を示したが0-40 では理論値よりも低くなるという特徴が明らかになり,0-40 からでは得点しても理論値よりも11.7%低い割合でしかゲームを取得できないという課題を抽出することができた.さらに,重要度が高い5 カウントにおいて,得点できればゲーム取得率が高くなるにもかかわらず得点率が低くなる傾向にあるという課題が抽出された.
  • 村川 大輔
    2022 年 14 巻 p. 177-183
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,作戦ボードの向きの違いが選手配置の認識に与える影響を明らかにし,より効果的な戦術ミーティングの実施方法を検討することであった.大学サッカー選手15 名を対象に,実際の試合場面を再現した選手配置の画像を用いて,再認段階の選手配置が事前に呈示される視聴段階の選手配置と同じであるかどうかを回答する同異判断課題を実施した.選手配置の画像は,縦向きと横向きの2 条件で呈示し,同異判断の決定時間と正答率について条件間で比較を行った.分析の結果,正答率に関しては,条件間で有意な差は認められなかった一方で,決定時間に関しては,縦向き条件の決定時間が横向き条件と比較して有意に早いことが示された.この結果は,サッカー選手にとって,縦向きに呈示された選手配置の認識が容易であることを示す.以上より,戦術ミーティングを行う場合には,作戦ボードを縦向きに使用することの有効性が示唆された.本研究の知見は,指導現場へ直接応用できるという点で重要な意味を持つといえる.
  • 池田 航, 坂本 将基
    2022 年 14 巻 p. 164-176
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,グラウンダー(ゴロ)のボールをトラップする場面における,サッカー経験者の視線行動の特徴を明らかにすることを目的とした.サッカー経験者24 名と未経験者22 名は,グラウンダーのパスをトラップした後,ボールの出し手が移動した場所へパスを返すように指示された.その際,被験者の眼球運動を30Hz で記録し,各フレームにおける視線が向けられた箇所を同定した.また,各フレームにおいて,視覚的注意を反映する瞳孔面積も算出した.その結果,サッカー未経験者はボールが蹴り出されてからトラップする直前までボールを見続ける傾向にあるが,サッカー経験者はパスを出す(返す)相手や,ボールが通過した領域付近に視線を置く傾向にあることが明らかになった.また,トラップする直前では,サッカー経験者の瞳孔面積がサッカー未経験者のそれよりも縮小することも確認された.このような「パスを出す(返す)相手,もしくはボールの周辺領域に視線を向ける」,また,「視線を向けている場所に注意を向けすぎない」,というサッカー経験者に特有の視線行動は,ボール操作の習熟に起因することが推察される.
  • コーチングへの活用を目指して
    小澤 雄二, 小崎 亮輔, 藤田 英二
    2022 年 14 巻 p. 158-163
    発行日: 2022/07/21
    公開日: 2022/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,柔道選手が「積極的に前に出て相手を押し込んで試合を展開することの利点」と「握力発揮の影響」を明らかにするために,重心位置の相違や,握力発揮の有無を設定した条件下における単純全身反応時間を検証し,柔道のコーチングに活かすことを目的とした.結果は,以下に示すとおりである. 1.単純全身反応時間は,握力発揮の有無に関わらず,重心位置が前方,自然体,後方の順に速かった. 2.単純全身反応時間は,重心位置に関わらず,握力発揮なし時に比べ,握力発揮あり時には遅延した. 以上のことから,試合において積極的に前に出て相手を押し込むことや,組み手の工夫によって柔道衣の握り方に強弱を付けることは,より素早い反応による素早い技出しや防御動作が期待できるという点において,有利に試合を進めるための戦術となり得るものと考えられる.
  • 福村 僚, 甲斐 智大, 塩川 勝行, 高井 洋平
    2022 年 14 巻 p. 145-157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,サッカーの攻撃方向を伴うボールポゼッショントレーニングにおける集団変数とテクニカルプレーに対する競技水準の影響を明らかにすることを目的とした.22 名の大学男子サッカー選手を,レギュラー群(N = 11)および非レギュラー群(N = 11)に分けて,同一のオーガナイズで攻撃方向を伴うボールポゼッションを行わせた.ポゼッションのオーガナイズは,縦12m 横24m のコート内で4 対4 を行い,両端の短辺に2 人,コート内に1 人のフリーマンを配置した.テクニカルプレー(コントロールミス,パス本数,パッキングレート)は,記述分析で定量した.選手の位置は,ローカルポジショニングシステムによって記録された.選手の位置から攻撃および守備チームの面積を算出した.パッキングレートは,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも高かった.パス本数は,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも多い傾向であった.競技水準に関わらず,攻撃時の面積は守備時の面積よりも広かった.攻撃時の面積は,非レギュラー群よりもレギュラー群のほうが大きく,守備時の面積は,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも小さかった.本研究の結果は,攻撃方向を伴うボールポゼッションを同一のオーガナイズで実施した場合,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりもパッキングレートが高く,それは攻撃時にボールを受けるための位置による違いである可能性が示唆された.
  • 種目間の違いに着目して
    梶山 俊仁, 小林 勇気, 相馬 雅樹, 林 卓史, 禿 隆一, 新井 祐子, 井上 裕二, 大塚 道太, 古田 久, 黒川 隆志
    2022 年 14 巻 p. 137-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス
    フェンシングのエペとサーブルを専門種目とする男子大学選手各9 名を対象とし,アジリティー能力と下肢パワー発揮能力改善ための体力トレーニングと実戦練習トレーニングを考案し,8 週間のトレーニング効果を検討した.トレーニング前値でみると,エドグレンサイドステップにおいてサーブル(32.4 回)はエペ(27.2 回)より有意に高く(P<.05).両足を揃えた連続5 回跳びにおいてもサーブル(13.63m)はエペ(12.43 m)より有意に高かった(P<.05).トレーニング前後の比較では,エドグレンサイドステップにおいてサーブルの後値(35.7 回)は前値(32.4 回)より有意に高く(P<.01).両足を揃えた連続5 回跳びにおいてもサーブルの後値(14.01 m)は前値(13.63 m)より有意に高かった(P<.01).エペではトレーニング前後値に有意差が認められなかった.以上, サーブルのみに効果の高い実戦練習により両能力にトレーニング効果が発現した.
  • 新井 彩
    2022 年 14 巻 p. 128-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,特定の競技を長期間行っている複数競技選手を対象に,律動的な運動を行わせたときの各動作周波数の特徴から,長期間に渡る競技経験がもたらす動作特性を検討し,特定競技継続者の特徴から,体力の値の評価や意味を再考できる基礎的知見を得ることを目的とした.長期間特定の競技を継続してきた女子学生アスリート(6 競技,45 名)および特定の競技スポーツに取り組んだ経験のない女子大学生8 名を対象とし,4 種類の律動的な運動を,対象者個人の自然なリズムで行わせた.日常生活動作である歩行には,競技動作で培われた敏捷性が速く歩く傾向を生む可能性や,競泳の動作周波数の特徴が歩行速度を遅くする可能性を示した.また,すべての運動について,競泳選手が特徴的に低い動作周波数を示すことが明らかとなり,長期的な競技的トレーニングがもたらす動作の特徴に対する理解の必要性が示された
  • 暑熱対策の有効性に着目して
    吉塚 一典, 松本 直子, 田川 武弘
    2022 年 14 巻 p. 118-127
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,長距離走の暑熱対策として開発した新帽子の効果を検証することを目的に,4種類の帽子( 新帽子,ツバ通気帽子,メッシュ帽子,ノーマル帽子) の比較実験を行った.屋外走行時の帽子内環境を模擬するテストでは,帽子内温度の上昇が最も顕著であったメッシュ帽子の31.3℃に対し,新帽子は28.4℃と最も上昇が抑えられた.炎天下での屋外長距離走テスト(10000m 走,被験者8 名) においても,他3 帽子では被験者の鼓膜温が走行後に有意に上昇したのに対し,新帽子では有意な上昇がみられず,RPE も有意に低かった.また実走テスト時の被験者の主観的評価を見ても,新帽子は他に比べて熱のこもり感が少なく,頭部の涼しさに優れていた.さらに2019 年9 月のMGC レースにおいて新帽子を着用した選手達からも,通気性があり頭が涼しい,ムレが軽減されるという評価を得た.これらのことから,新帽子がランニング時の暑熱対策として有効であることが示唆された
  • 幸福 恵吾, 藤田 英二, 久保 誠吾, 小濱 剛, 楠 正暢, 竹島 伸生, 中垣内 真樹
    2022 年 14 巻 p. 109-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    地域在住高齢女性11名(77.6 ± 7.1 歳)を対象にモトタイルを用いた運動を地域公民館において集団で週2 回,12 週間実施し,バランス能力への効果を検討した.バランス能力の指標には,開眼での20 秒間その場足踏みテスト(マーチテスト)を実施し,2 つの赤外線センサー機器を用いて頭部関節点の総軌跡長(TMD)と最大軌跡長(MMD)並びに膝関節点の軌跡長(KMD)の変化と両脚の歩調(PACE)とその変動係数(CV)を用いた.また,バランス能力に関連するパフォーマンステストのファンクショナルリーチ(FR),30 秒間チェアスタンド(30-CS),アップアンドゴー(TUG)も実施した.この結果,TMD,MMD,PACE 左脚CV およびTUG が運動後に有意に小さく,またFR,30-CS は有意に増加した.これらは,中程度以上の効果量が示された.他の赤外線センサー関連指標に有意な変化は認められなかったが,全体的にマーチテスト時の頭部関節点と膝関節点の揺れ,両脚を上げる際のバラツキが小さくなる傾向がみられた.以上から,モトタイルを用いた運動は,地域に在住する自立した高齢者のバランス能力改善のための運動の一つとして勧められる.
  • 右足踵痛未経験者の踏み込み時に発生する音についての検証
    竹中 健太郎, 永原 隆, 下川 美佳
    2022 年 14 巻 p. 97-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    右足踵部痛は,剣道における代表的な傷害の一つである.本研究では,ある一人の競技者が右足踵部痛を踏み込み動作の修正により改善させた回顧的アプローチによる事例報告( 下川ほか,2020) を手掛かりに,大学剣道選手について競技活動における右足踵部痛の傷害経験の有無により対象群を設定し,踏み込みの動作と地面反力,踏み込み時の音の違いについて比較,検討した.その結果,これまでに踵を痛めた経験がない大学剣道選手は,その経験を有する選手に比べ,踏み込みの力が強いにも関わらず,踵を痛めない動作を獲得していた.その特徴として,踏み込み直前に右脚の膝関節がより屈曲し,膝よりも踵が後方に位置していることがわかった.さらに,踵痛未経験者の踏み込み音は高く大きな音であり,下川ほか(2020) の報告を支持する傾向が示されたことから,踏み込みの音は,右足踵部痛の改善に向けたフォーム修正へのアプローチに活用し得る可能性が示された.
  • ヒールストライクを有する大学女子中距離選手の場合
    松村 勲, 川邉 健斗, 金高 宏文
    2022 年 14 巻 p. 82-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,ランニング動作の修正が思うように上手く導き出せなかった大学女子中距離選手を対象に,空気圧式体重免荷トレッドミルを用いたトレーニングでランニング動作の修正が可能かを,事例的に検討したものである.本研究の対象者である陸上競技女子中距離選手は,ランニング動作の修正を目的に,空気圧式体重免荷トレッドミルを用いて約5 ヶ月間で25 回のトレーニングを実施した.その結果,空気圧式体重免荷トレッドミルを用いたランニング動作修正のトレーニング実施前後で,jog 時の足関節角度の底屈傾向,および接地時間の短縮と滞空時間の増大の変化,地面反力のヒールストライク傾向からフォアフット傾向への波形の変化, 800 mの自己記録の約4 秒更新といった変化が見られた.それらの変化は,おおよそ対象者自身が空気圧式体重免荷トレッドミルを用いたランニング動作修正のトレーニング実施前に,ランニング動作の修正の狙いとしていた内容であった.以上のことから,空気圧式体重免荷トレッドミルを用いることで,効果的にランニング動作を修正させることができる可能性があると考えられる.
  • バディシステムの導入を含む各種取り組みの成果と課題の検討
    松村 優輝, 松下 盛泰, 渡辺 輝也
    2022 年 14 巻 p. 68-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/29
    ジャーナル オープンアクセス
    保健体育の教職課程では柔道を安全に教えられる指導力の基礎を育む必要があるが,コロナ禍における柔道の専門実技の実施には高い感染リスクが認められる.本研究では,柔道の専門実技における学修成果の保障に向けたバディシステムの導入などの取り組みについて,その成果と課題を検証した.本研究の筆頭著者が柔道の専門実技のTAとして勤務する大学では,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け,2021年度春学期には5月17日よりハイブリッド授業,5月31日よりオンライン授業を基本とすることによる感染防止策がとられたが,専門実技は例外的に対面実施が許可された.柔道の専門実技では,当初,できるだけ早く指導内容を網羅することを試みたが,後に,学修の深まりの不足への懸念から,身体接触を伴う学習活動に際してペアを固定するバディシステムを導入するという方針転換を行い,バディへの感染リスクを押さえるため,日常生活において濃厚接触に該当する接触者数を記録し,接触者数を減らす意識をもたせる指導も取り入れた.事後的検討の結果,バディシステムの導入には,バディに対する責任を自覚することによる受講生の感染防止意識の向上という意義が認められた.
  • バタフライと平泳ぎでのopen turnに着目して
    森 誠護, 永田 聡典, 名頭薗 亮太
    2022 年 14 巻 p. 60-67
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,バタフライ及び平泳ぎで用いるopen turnに着目し,ターン動作とジャンプパフォーマンスとの関係性について明らかにすることで,競泳選手の効果的なトレーニング方法の基礎資料を得ることを目的とした.本研究は,バタフライ及び平泳ぎを専門とする大学男子競泳選手8名を対象とし,競泳ターン測定はopen turnにて実施した.被験者の泳区間はターン前後10mとし,全力泳にて泳動作及びターン動作を実施した.被験者のターン動作を評価するため,ターン動作時の回転時間,足部接地時間,蹴り出し速度をそれぞれ計測した.ジャンプパフォーマンス測定では,スクワットジャンプ,垂直跳び,立幅跳びを計測した.この結果,ターン測定とジャンプパフォーマンス測定の変数間での関係性において,ターン時の蹴り出し速度とスクワットジャンプにおけるピークパワー(r=0.857,p<0.01)及びピーク速度(r=0.805,p<0.05)との間に有意な相関関係が認められた.以上の結果から,スクワットジャンプのピークパワー及びピーク速度を高めるためのトレーニングはターン局面のパフォーマンス向上に寄与する可能性があることが明らかとなった.
  • 中島 さち子, 田中 香津生, 清水 克彦, 山田 浩平, 山羽 教文
    2022 年 14 巻 p. 45-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,小学校「体育」で取り扱うゴール型ボール運動「タグラグビー」の新たな学習指導計画として,プログラミング的思考をとりいれた,STEAM化されたタグラグビーの学習指導計画を開発し,その学習効果を調査することである.まずは,タグラグビーを数理モデル化した碁盤ゲームを開発し,局面での認知・判断要素を抽出したAIシミュレーションツールを開発,スポーツにプログラミング的思考を導入し,多角的に戦術を考えさせる計9時間の学習指導計画を立案した.その後,公立小学校第5学年2クラス計52名を対象に本学習指導計画を実施し,事前事後の児童のライフスキルやパフォーマンスの向上,学習や運動への態度の変化,情意や認知の形成などを調査した.結果,タグ取得数やパス回数の有意な増加 (p<0.01),問題解決力や対人関係力などの有意な向上 (p<0.05) などパフォーマンスやライフスキルの向上が見られた.従って,本学習指導計画は,平成29年公示の小学校学習指導要領 (文部科学省,2018a) にて奨励されているプログラミング的思考を用いた教科等横断的な学習指導計画の一例であり,体育でも学習効果があると示唆された.
  • 吉本 隆哉, 杉田 早登, 竹内 郁策
    2022 年 14 巻 p. 39-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    本研究では,ハンマー投げを模したスイングトレーニングが,外側腹筋群の形態とスイング速度に与える影響を明らかにすることを目的とした.被検者は,大学硬式野球部に所属する野手17名(年齢19.5 ± 1.5歳,身長169.8 ± 4.0 cm,体重66.9 ± 6.4 kg)とし,トレーニング群8名とコントロール群9名に分けた.スイング速度の測定は,慣性センサユニット,アタッチメントおよびスマートフォンのアプリケーションから構成されるバットスイング解析システムを用いて測定した.加えて,踏み出し脚側の外側腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋および腹横筋)の筋厚を測定した.トレーニングは,5 kgメディシンボールとネットを組み合わせたものを用い,ハンマー投げのトレーニングを模した上肢および体幹を回旋させながら歩行するスイング歩行を実施した.その結果,スイング速度は両群間で有意な交互作用が認められ,トレーニング群のみ有意な増大がみられた.以上のことから,ハンマー投げを模した体幹回旋トレーニングは,野球のバッティングにおけるスイング速度の向上に有効となることが明らかとなった.
  • 細川 史裕, 岩野 華奈
    2022 年 14 巻 p. 27-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/04
    ジャーナル オープンアクセス
    スポーツ選手は日常的に多くの時間を充て,スキル獲得を目指している.本研究では,競技チアリーディング日本トップ選手における,スキル獲得の要因について明らかにした.調査対象者は,競技チアリーディングの現役日本人女子選手で,所属チームにおいて全国大会での優勝経験を持ち,且つ世界選手権の日本代表に選出され優勝した経験がある7 名とした.1 対1 の半構造化インタビューによって収集されたデータは,質的データ分析手法SCAT を用いて分析された.その結果,15 個の概念を生成し, 最終的には,目標の明確化や動機の内在化といった「認知的方略」,練習の質や量といった「練習の内容」, 基礎スキル練習や専門トレーニングによって獲得された「スキルの転移」,フィードバックや分析から得られる「選手としての学び」によって,スキルを獲得していた.
  • ステップ頻度に着目して
    内藤 景, 堤下 凌, 山元 康平
    2022 年 14 巻 p. 13-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    本研究の目的は,110mH走を専門とする学生競技者1名を対象に,アプローチ区間の1歩毎のステップ頻度,接地時間,滞空時間に着目して,アプローチ区間タイムの変動に関係する要因を単一事例で検証することであった.110mH走の規格でハードルを3台設置したハードル走を複数回実施し,アプローチ区間における1歩毎のステップ頻度,接地時間,滞空時間の変化を調べ,アプローチ区間に要したタイムと1歩毎のステップ頻度,接地時間,滞空時間との相関関係を分析した.その結果,アプローチ区間タイムと1歩毎のステップ頻度の相関関係は,5歩目のステップ頻度のみ,有意な負の相関関係(r=-0.638,p=0.008)が示された.また,5歩目のステップ頻度と滞空時間との間に有意な負の相関関係(r=-0.718, p=0.002)が示された.さらに,アプローチ区間タイムと踏切側距離との間に有意な負の相関関係(r=-0.607, p=0.013)が示された.以上の結果から,アプローチが8歩で5歩目のステップ頻度が重要であることから,踏切3歩前において,滞空時間を短縮しステップ頻度を高めることが,1台目の踏切位置を遠くすることに関係し,アプローチ区間タイムの短縮に繋がる可能性が示唆された.
  • 中島 大貴, 畔栁 俊太郎, 安藤 優香, 廖 本暠, 山口 瑞生, 桜井 伸二
    2022 年 14 巻 p. 1-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    野球において,投手が投じる変化球は,“キレ”という言葉を用いて評価されることが多い.しかし,このキレに対して野球選手がどの程度共通した認識を持っているのか,また,それは客観的な指標(速度や変化量などの運動学的特徴)で表すことができるのかは明らかではない.そこで本研究では,①野球投手が投じた変化球に対する評価者のキレの評価の一致度を検証すること,②そのキレの評価と実際に投球された変化球の運動学的特徴との関係を明らかにすることを目的とした.そのために,高校生投手12名,大学生投手20名が投じた各球種の運動学的特徴を調べ,高校生,大学生それぞれ投手と同一チームに所属する複数の捕手(評価者)に各投手の各球種のキレを5段階で評価させた.そして,評価者間のキレの評価の一致度,および,キレの評価とその運動学的特徴との関係を,高校生,大学生それぞれにおいて調べた.その結果,キレという言葉に対する認識が一致している球種と,そうでない球種があることがわかった.また,カーブ,カットボールにおいては,ボールの運動学的特徴でキレを定量化することができたが,スライダーやチェンジアップにおいてはできなかった.
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