2016 年 71 巻 p. 39-55
本論文は、2011年に新たに施行されたスコットランドの公文書法(Public Records (Scotland) Act)に多大な影響を与えた、The Historical Abuse Systematic Review: Residential Schools and Childrenʼs Home in Scotland 1950 to 1995 (通称Shaw Report)を含む虐待調査報告書を分析し、児童福祉施設が抱える記録管理の課題が、報告書の中でどのように訴えられ、社会にどういった影響を与えたのか、また、新たな公文書法は、スコットランドの記録管理をどのように変化させたのかを考察するものである。Shaw Reportで報告された課題は、日本の児童福祉施設にとっても、共有できる課題である。現在、日本でも増加する虐待を背景に約4万6千人の子どもが、社会的養護の下で暮らしており、彼らの約9割が児童養護施設をはじめとする児童福祉施設などで集団生活をおくっている。家族と離れ、施設で生活を送る子どもたちは、自らの過去を語る人が身近にいることが少ない。そのため、自らを知るための記録は彼らにとって、重要な役割を果たし、彼らのために記録へのアクセスを保障することは、専門職のみならず、社会の重要な責務といえる。