本稿は、近世から現代に至るスウェーデン・フィンランドの歴史的変遷を「情報国家(Information State)」という視座から再構築する動向紹介である。資源に乏しい北欧の小国がいかにして軍事大国、そして高度福祉国家へと発展したのか。その要因を、人口や資源を精緻に把握・動員する「情報のロジスティクス」に見出し、最新の北欧諸国におけるアーカイブズ学(ルンドらのドキュメンテーション理論等)の視座に基づきながら紹介する。 具体的には、近世の兵籍簿や教区簿が単なる記録ではなく「兵士」や「国民(納税者)」を創出する装置として機能した点、リンネの分類学が行政と共通する情報基盤技術であった点を論じる。さらに、1766年の出版自由法による「情報国家」の透明化と、20世紀の優生学政策による情報の悪用という「光と影」を対比させ、記録管理が国家の存立と民主主義を支える倫理的かつ戦略的なインフラストラクチャーであることを提示する。