教育経済学研究
Online ISSN : 2436-1801
Print ISSN : 2436-1798
原著論文
日本の大学におけるグローバル人材育成の現状と課題
―外なる国際化及び内なる国際化を中心に―
西村 政子趙 彩尹
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 1 巻 p. 12-25

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抄録

日本の高等教育機関におけるグローバル化は、国際社会に挑戦し活躍できる人材を育成し日本の国際競争力を上げるという経済界が抱える課題の解決を背景に、産官学が連携して戦略的な展開を図り、グローバル人材育成の最も有効な施策として海外留学を推進してきた。その反面で留学の阻害要因が、若者を留学の断念や短期間の語学留学等にシフトさせている現実がある。 本研究では、大学におけるグローバル人材育成の取組みを「外なる国際化」と「内なる国際化」に区分し、それぞれを「外なる国際化:学術の習得や研究等の目的達成のために自国以外に比較的長い期間在留する、海外留学に代表される取組み」と「内なる国際化:グローバル人材に求められる能力やスキルを大学のキャンパスにおいて身に付けるための、海外留学に替わる取組み」と定義した上で、海外経験をしない若者が、留学経験者と同等の能力を取得するための「内なる国際化」の体系化を目的とする。その第一段階として本稿では、グローバル人材育成を海外留学から受ける影響に着目して考察し、公表された統計データを用いて留学によって育まれる能力とグローバル人材の要素との関係性を明らかにする。 検討の結果、両者の間には肯定的な影響があることを確認し、「外なる国際化(海外留学)」の限界を補完し人的資本を高める手段として「内なる国際化」の必要性について考察した。 本稿の結果を受け、第二段階では、他大学における実践例の情報を収集するとともに、「内なる国際化」「国際理解」「異文化理解」「多文化共生」等に係る先行研究を参考に、大学における「内なる国際化」の取組みに必要な要素を探求・考察し、実践に繋げる一助とすることを目指す。

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© 2022 公⽴⼤学法⼈下関市立大学
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