教育経済学研究
Online ISSN : 2436-1801
Print ISSN : 2436-1798
1 巻
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原著論文
  • -人生100年時代を見据えた「キャリア教育」への一考察-
    上野 惠美, 趙 彩尹
    2022 年 1 巻 p. 1-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年の大学設置基準の改正により、実質的に大学でのキャリア教育やキャリア形成・就職支援が義務化された。人生100年時代を生きていかなければならない現代の学生にとって、キャリア教育に必要な要素とは何かを探るべく、本研究では、就職活動の成果を実就職率とし、実就職率が、他の大学と比較して相対的に高い大学では、特徴のあるキャリア教育が行われているのではないかと仮定した。そこで、大学通信オンラインの2021年度学部系統別実就職率ランキング(経済系)の上位30校の中の筆者の所属する大学と同じ校種である公立大学のみを取り上げて、各大学のキャリア教育のシラバスを調査した。先行研究で何度も、「以前は就職支援として正課外で行われていたものが、キャリア教育として、正課内に組み込まれていった」という指摘があるが、公立大学においても、その傾向が強かった。しかし、実就職率が相対的に高いということは、このようなキャリア教育が、ある意味、効果的であったとも言える。それでは、引き続きこのようなキャリア教育を続けていくことが良いことなのか。今後は、さらに研究を深め、キャリア教育の方向性を探っていきたい。
  • ―外なる国際化及び内なる国際化を中心に―
    西村 政子, 趙 彩尹
    2022 年 1 巻 p. 12-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の高等教育機関におけるグローバル化は、国際社会に挑戦し活躍できる人材を育成し日本の国際競争力を上げるという経済界が抱える課題の解決を背景に、産官学が連携して戦略的な展開を図り、グローバル人材育成の最も有効な施策として海外留学を推進してきた。その反面で留学の阻害要因が、若者を留学の断念や短期間の語学留学等にシフトさせている現実がある。 本研究では、大学におけるグローバル人材育成の取組みを「外なる国際化」と「内なる国際化」に区分し、それぞれを「外なる国際化:学術の習得や研究等の目的達成のために自国以外に比較的長い期間在留する、海外留学に代表される取組み」と「内なる国際化:グローバル人材に求められる能力やスキルを大学のキャンパスにおいて身に付けるための、海外留学に替わる取組み」と定義した上で、海外経験をしない若者が、留学経験者と同等の能力を取得するための「内なる国際化」の体系化を目的とする。その第一段階として本稿では、グローバル人材育成を海外留学から受ける影響に着目して考察し、公表された統計データを用いて留学によって育まれる能力とグローバル人材の要素との関係性を明らかにする。 検討の結果、両者の間には肯定的な影響があることを確認し、「外なる国際化(海外留学)」の限界を補完し人的資本を高める手段として「内なる国際化」の必要性について考察した。 本稿の結果を受け、第二段階では、他大学における実践例の情報を収集するとともに、「内なる国際化」「国際理解」「異文化理解」「多文化共生」等に係る先行研究を参考に、大学における「内なる国際化」の取組みに必要な要素を探求・考察し、実践に繋げる一助とすることを目指す。
  • 和田 健資, 小原 愛子
    2022 年 1 巻 p. 26-35
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    日本における旅館経営において、近年人手不足や後継者不足などが深刻化し、日本の宿泊産業である旅館の存続そのものの課題が議論されるようになってきた。しかし、旅館経営や人材不足の要因などについて言及した研究が少ない現状であったため、本研究では、ホテルとの比較を通して、定義や歴史的変遷、現状について、研究論文や書籍、官公庁等の調査などから幅広く文献を収集し整理することで、旅館経営における課題を明らかにした上で今後の展望について考察することを目的とした。旅館やホテルに関しての定義は法律的にみても曖昧なものであった。加えて、歴史的変遷をみても異なる変遷をたどっているものの、時代の変化と共に、特に日本における生活様式が欧米化することによって、宿泊スタイルも旅館とホテルでは差異がなくなりつつあり、旅館とホテルの区別を難しくしていることが明らかになった。また、ホテルが客室数を伸ばしているにもかかわらず旅館の客室数は減少傾向にあり、経営者の高齢化による後継者問題等によって課題を抱えるところもあることが明らかになった。旅館は、日本の文化を継承することが求められる旅館業務に関わる専門性や地域の観光ビジネスのマネジメントを行うことが必要とされ、そういった人材育成を行うことが課題として明らかになった。
  • 渡邉 尚孝
    2022 年 1 巻 p. 36-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、日本の高等教育機関におけるグローバル人材育成について、語学教育や海外留学への偏重という批判を踏まえた上で、近年の国内プログラムに関する論文や実践報告等を概観し、教養教育で培われるスキル育成の方法論や学習の過程を整理し、課題を明らかにすることを目的とした。分析の結果、グローバル人材育成に資する既存の国内プログラムは、産業界が大学卒業生に求めるスキル育成に概ね貢献しており、実際の海外経験でなくとも効果を有するという知見が得られた。また、PBL(Project-based Learning)やインターンシップ及びアクティブ・ラーニング等の活動形態も産業界の期待に応え導入が進んでいるが、その対象者や研究データは少なく評価方法も様々で、教育的介入による学習の過程が示されておらず、継続的で広汎な学際的分析を要するという課題が明らかとなった。
  • ー高等教育機関を中心にー
    砂原 雅夫, 金 珉智
    2022 年 1 巻 p. 50-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    リカレント教育は、1973年OECDの報告を受け、その後、ヨーロッパを中心とする海外において経済成長を促すための人的資本の蓄積が進んだ。一方、日本においてはリカレント教育を生涯学習体系に組み入れ、直接的に経済成長を促すものではなかった。本研究では、リカレント教育を歩んだ日本における歴史的変遷を整理するとともに、人的資本の観点から考察することを目的とした。政府資料、各大学資料に基づき文献的考察を行った結果、2000年に入っては経済成長につなぐリカレント教育の動きがみられはじめ、労働力の量的な拡大を目指す再教育・職場復帰型の「教育代替型」が主流であったが、2010年代後半に入っては既修得能力を発展させていく「教育補完型」が主流となった。このことから、リカレント教育課程の拡大が人的資本の蓄積を通じて日本の経済成長に寄与したものと考えられる。
  • ―1~2 歳 ver.の縦断データを中心に―
    宇多川 清美, 小原 愛子
    2022 年 1 巻 p. 62-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    乳幼児期の環境は、「保育所保育指針(厚生労働省,2017)」総則、「幼稚園教育要領(文部科学省,2017)」第2章、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領(内閣府・文部科学省・厚生労働省,2017)」年齢ごとのねらい及び内容等に記載されるように、重要な項目となる。しかしながら、1~2歳児の成長のための各領域における実践検証はほとんどない。そこで、本研究では、CRAYONBOOKの1~2歳ver.を使用し、実際の保育園において縦断的にデータ収集を行うことによって、子どもの概念形成や自己表現の特徴や大人の関わり方など、乳幼児教育における特徴を明らかにすることを目的とした。その結果、全領域の中で「数概念」及び「数的表現」の点数が最も低くなっており、乳幼児教育における課題として「数」に関する教育の課題があることが明らかになった。また、縦断分析の結果、乳幼児教育現場における環境と日常生活は全体的に点数が上昇していたものの、「理解」と「納得」といった大人の関わりには大きな変化が見られなかったため、今後、保育士への研修や説明の機会を増やすなど、改善の機会を作っていく必要性が明らかとなった。
  • 磯部 一恵, 岡田 直美, 太田 麻美子
    2022 年 1 巻 p. 72-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、長い人類の歴史の中で組織の形がどのように変化・変遷してきたのか、また現代の日本における若者の雇用の現状と課題について考察する。厚生労働省の調査によると、平成22年にリーマンショックによる不況を脱してからは、大卒者の離職率は約3割で推移している。VUCAの時代と呼ばれる変化の激しい社会において、社会の変化・働き方の変化等により、既存の「組織」に関する理論が通用しなくてってきていることが、離職率や、内閣府やギャロップ社の調査結果から考えられる。今後、近年出現したホラクラシー組織、アメーバ組織、ティール組織と呼ばれる進化型組織などのように、「組織」の形態を変えていくこと、またこれからの変化の激しい時代において持続的に経営される組織編制を可能にするための新しい組織評価の基準が必要であると考える。
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