2018 年の改定から、幼稚園教育要領 3)、保育所保育指針 4)、幼保連携型認定子ども園教育・保育要領 5)の3つの指針において年齢ごとに合わせた触覚・味覚・嗅覚の発達に関する活動内容を示していることから、乳幼児期における触覚・味覚・嗅覚の発達を促すことは必要不可欠である。しかし、現場では3歳以上児に対する実践が多くなっており、低年齢における保育実践はほとんど見当たらない。さらに、いずれの年齢においても、触覚・味覚・嗅覚の概念形成を促す活動の数も少ないことが現状である。
そこで、本研究では、触覚・味覚・嗅覚を育てる保育実践を含む論文を、「年齢」、「保育実践のねらい」、「触覚・味覚・嗅覚を形成する実践の内容」、「触覚・味覚・嗅覚を形成する保育者の援助」、「触覚・味覚・嗅覚の形成が見られる子どもの様子」の観点に分けて分析することによって、触覚・味覚・嗅覚を育てる保育実践の現状を検討、課題を考察することを目的とする。
対象となった 28 件の実践のうち、触覚・味覚・嗅覚に関するねらいが設定されている実践が 4 件、触覚の概念形成が見られる保育実践が 19 件(味覚・嗅覚の実践と重複あり)、味覚の概念形成が見られる保育実践が 4 件(触覚・嗅覚の実践と重複あり)、嗅覚の概念形成が見られる保育実践が 4 件(触覚・味覚の実践と重複あり)となった。
分析の結果、日本の乳幼児教育における触覚・味覚・嗅覚を育てる保育実践においては、実践に対する明確なねらいを設定し実施した事例が少ないことをはじめ、触覚・味覚・嗅覚の発達のために必要な大人の関わりを明確する必要性と各年齢(0-2 歳の未満児~5 歳の年長児)に合わせ、段階的に保育及び実践を行う必要があることが課題として明らかとなった。これらの課題を解決に導くためには、保育現場の労働環境を見直すとことに加え、保育士の専門性を高めるための研修及び保育活動を助ける専門的なプログラムを考案することが必要であろう。今後は、触覚・嗅覚・味覚を含めた体感概念 8)の定義を用いて触覚・味覚・嗅覚の概念形成に関する研究を深めること、さらに、乳幼児期の発達及び教育に活用されている CRAYONBOOK の【体感概念】の領域を用いてさらなる研究を行う必要があるだろう。
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