教育経済学研究
Online ISSN : 2436-1801
Print ISSN : 2436-1798
医療的ケアを必要とする子どもの医療負担の経済的支援制度 及び学校教育に関する課題
-インクルーシブ教育システム構築に向けた課題の一考察-
趙 彩尹 小原 愛子照屋 晴奈
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2022 年 2 巻 p. 14-26

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抄録
本研究では、義務教育段階の小・中学校及び特別支援学校小学部・中学部に在籍する医療的ケア児に関する医療負担の経済的支援制度及び学校教育における現状整理することで、インクルーシブ教育システム構築のための課題を明らかにすることを目的とする。経済的支援制度については、医療的ケア児に関わる制度を整理し、さらに学校教育の課題について、教育システムのインクルーシブ教育評価指標(Inclusive Education Assessment Indicator; 以下、IEAI)を用いて比較対応することとした。医療的ケア児の増加などを背景に2020年に成立した支援法によって、これまで行われていた制度の予算や事業が大幅に増加しているため、家庭の経済的負担を軽減する経済的支援や看護師配置といった環境整備が拡充につながり、さらにそれらについてIEAIとの対応によりインクルーシブ教育の観点からみると、医療的ケア児の通学といった「教育の保障」の実現や、よりよい環境での学習が行える「人的・物的環境整備」につながっていることが明らかになった。しかしながら、国の制度や予算が増加している一方、地方自治体により格差があることや教育委員会の判断が異なることなどがあるため、学校現場レベルで見るとまだ整備されていない地域等もあるなど現場での課題は残っている。そのため、今後は、地方自治体レベルでこれらの制度がどの程度活用され、インクルーシブ教育実現に向けてどの程度達成されているかなどを評価することが必要であろう。
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© 2022 公⽴⼤学法⼈下関市立大学
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