抄録
本稿は、障害当事者の名乗りによるカフェ活動と企業活動の接点を、マーケティングにおける経験経済やCSV(Creating Shared Value)等の視座から質的に分析・解釈することで、障害当事者のカフェ活動の現状や課題を抽出した事例研究である。自己発信を行う障害当事者の考え方や支援企業との関わり、及びマーケティング戦略に関する意見を直接聴取し、カフェ利用者を含めたコミュニティがどのような相互作用の中で「共生」を学習してゆくのか、活動実践者の言葉から読み解くことを目的とした。その結果、雛形としては小さいながらも、障害を名乗り活動することの覚悟や、仲間同士の結束と外部との交流を図る戦略性や成果が明らかとなった。カフェ運営実践者は利用者の体験価値について、「対話」を通した学びの機会として捉えている。その活動は異文化との出逢いの環境を演出する経験経済の観点が含まれたエンターテイメント事業であり、障害当事者だけの閉じた交流に留まらず、外部との相互作用による社会教育的効果を産み出すと考えられる。