抄録
急速に高齢化が進み、生産年齢人口割合が低下する社会において生じるさまざまな問題への解決策の一つとして生産性の向上が挙げられる。IT活用は生産性向上の有効な手段の一つとなりうるが、IT化を担うシステムエンジニアは不足しており、社会のIT化需要を満たせていない状況が続いている。このような状況において、大学がデータサイエンス学部を新設したり、初等、中等教育でも情報の授業を始めたりとさまざまな試みが見られる。本研究では、就業後の企業内教育についての分析を行うものとする。教育は人的投資と考えられるが企業内の教育は企業収益を目的としていることから、教育投資から十分な収益が得られることが必要とされる。そこで本研究ではIT企業におけるROIの実態を明らかにし、教育投資と投資収益率の関係性を分析するために、筆者が所属するソフトウェア会社の10年以上に渡るデータを収集し、在籍期間、学歴、新入社員研修費用、入社試験結果等様々な属性と企業収益率の関係性を明らかにし、さらには、離職率、平均収益から将来利益期待値を算出し、企業における教育投資のあり方を考察する。