本研究では、「2023年発達障害者の仕事と生活実態調査」のデータを用いて、発達障害のある人々の自己決定に影響を与える要因を特定するため、機械学習手法であるランダムフォレスト(Random Forest)と多重回帰分析を組み合わせて分析を行った。分析対象は、20歳以上45歳以下の就職年齢に該当する成人発達障害者1,897名であり、残差が標準正規分布から期待される範囲を外れた異常値2名を除外した結果、最終的に1,895名が分析対象となった。
発達障害者の自己決定に影響を与える個人要因としては、身体的要因に関するIADL(生活支援活動)とADL(日常生活動作)の2つの変数が分析された。環境要因の中で就職要因として、「月平均賃金」、「就業準備状況」、「過去の就職経験」、「過去3年間利用した雇用サービス(就職斡旋)」4つの変数が選定された。環境要因の中で 社会文化的要因 として、「民間保険加入の有無」、「当事者の将来計画」、「障害による差別経験」3つの変数が選定された。最後に、環境要因の中で 環境・サービスアクセス要因として、「主保護者の1日あたりのケア時間」、「過去1年間に経験した活動(映画館、コンサート、博物館、テーマパーク等)」、「過去1年間に経験した活動(旅行)」、「居住環境」4つの変数が選定された。
しかしながら、「2023年発達障害者の仕事と生活実態調査」のデータに内在する限界とその解釈については慎重な考慮が必要である。本研究における従属変数である発達障害者の自己決定に関する情報は、保護者調査の一部の項目に依拠している。このため、発達障害者の自己決定に関する評価は、保護者による推定に基づいており、保護者自身の認識や判断に大きく依存している点を考慮する必要がある。
抄録全体を表示