教育経済学研究
Online ISSN : 2436-1801
Print ISSN : 2436-1798
再検証・中国高等教育の収益率と再取得学歴
生涯学習社会における収益率の推定モデル構築に向けて
陳 炯楷 川又 亮
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ジャーナル オープンアクセス

2026 年 8 巻 p. 16-29

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抄録
本稿では,生涯学習社会における高等教育学歴の取得経路(「ストレート」か「再取得」か)ならびに,その取得時期(人生初期かそれとも中・高年期か)の多様性を踏まえて,高等教育の収益率の再検討を行なった。中国総合社会調査(CGSS調査)データを用いた分析では,高等教育学歴を,ストレート高等教育学歴と,再取得高等教育学歴に分け,さらに再取得高等教育学歴の取得時期(20代・30代・40歳以上)をも考慮しながら,ミンサー型賃金関数法でそれぞれの収益率を推定した。その結果,以下の3点が明らかとなった。第一に,短大卒と大卒のいずれにも共通して,ストレート学歴の収益率が再取得学歴よりも高く,両者を区別しない従来の分析枠組みでは,高等教育の収益率の異質性を看過する可能性が否めないといえる。そして第二に,取得経路によって高等教育の収益率が異なるだけではなく,再取得学歴の取得時期によって収益率が異なることも確認された。具体的には,人生の遅い時期に学歴を再取得した方が,収益率は高くなる傾向がみられた。第三点として,この二点目の分析結果は,教育・学歴と賃金の結びつきの説明図式としてしばしば用いられる人的資本理論およびシグナリング理論では説明が困難な事象であることを指摘し,その仮説的な解釈として,キャリア段階に応じて再取得学歴の動機およびそれに結び付く職業的リターンの性質が異なる可能性を考察した。
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