ポット栽培試験は植物の水分吸収評価に有効な試験系であり，重量法によって植物の水分吸収量が評価される．重量法に基づく植物体の正確な水分吸収量の評価には，全体重量に占める茎葉部ならびに根系新鮮重の評価が不可欠である．茎葉部の新鮮重は，地際で刈り取りをしてそのまま容易に測定することができるが，根系は根を土から洗い出した後の根系表面の水分を十分に取り去る工程が，生育段階が進む中で根系形態が複雑化した場合に特に難しく，これまでに根系新鮮重の測定方法に関する知見はほとんどない．本研究は，機器を低価格で用意できて，測定結果に誤差が生じにくく，比較的身体的負担が少ない水稲根系の新鮮重測定法を提案した．検証結果から提案法について，1） 測定機器とする野菜水切り器を低価格で用意でき，2） 回転速度を1回転/秒と定めることが容易であることから測定結果に誤差が生じにくく，3） 測定にかかる身体的負担が少ないことが分かった．さらに，実際の栽培試験に同提案法を採用した場合に，考案時には想定できなかった問題点が生じないか，測定人数を増やしたときに効率性が上がるか，を検証し，異なる灌水タイミングでポット栽培した水稲根系の新鮮重評価に同提案法を採用し，測定法の有効性ならびに新鮮水稲根重測定の意義について評価した．
