2021 年 30 巻 3 号 p. 58-64
本研究では,接ぎ木部まで水没させた接ぎ木樹の根の呼吸活性と炭水化物の分配および落葉の程度について調査し,樹体の枯死の機構について考察した.湛水処理開始直後は,根の呼吸活性が低下することから根糖含量は増加するが,湛水処理が継続する間は根の呼吸活性が回復することがないにもかかわらず,根糖含量は徐々に減少して対照区との差はなくなった.落葉の程度は個体差が大きく,根および台木木質部の糖含量と相関が見られた.湛水処理期間中の根の呼吸活性は根糖含量と正の相関が見られたことから,湛水処理による根の呼吸活性の低下は酸素不足のみに起因するのではなく,炭水化物の分配も関与するものと考えられた.