根の研究
Online ISSN : 1880-7186
Print ISSN : 0919-2182
ISSN-L : 0919-2182
原著論文
パルプ培地がダッタンソバスプラウトの根および地上部の生育にあたえる影響
中井 勇介渡辺 慎一
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 31 巻 3 号 p. 90-97

詳細
抄録

近年,マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題となっている.人工光型植物工場においても作物を栽培する際,プラスチック発泡体の一種であるポリウレタンフォームなどが培地 (ポリウレタンフォーム培地) として用いられていることから,可能な限り海洋生態系への悪影響が少ない資材を原料とした培地候補の選定が必要と考えられた.そこで我々は,間伐材を主な原料とするパルプ培地に着目し,機能性成分を含有するダッタンソバスプラウトの根の発達および地上部の生育にあたえる影響を調査することで,人工光型植物工場でのスプラウト生産にパルプ培地が利用可能か検討した.その結果,ダッタンソバスプラウトをパルプ培地上で栽培するとポリウレタンフォーム培地と比較して,総根長,最長根長,根長密度,比根長,出液速度,地上部新鮮重量,根の新鮮重量および根の乾物重量が有意に増加することが判明した.また,パルプ培地の含水量や三相分布を調査した結果,含水量はポリウレタンフォーム培地よりも3.89倍高く,三相分布 (気相,液相,固相) の割合がポリウレタンフォーム培地よりも作物栽培に適していた.以上から,パルプ培地は人工光型植物工場におけるダッタンソバスプラウトの栽培において適した培地であり,ポリウレタンフォーム培地に替わりえる培地候補であると考えられた.

著者関連情報
© 2022 根研究学会
前の記事
feedback
Top