2009 年 31 巻 1 号 p. 3-11
近年の気候変動の影響により風水害が頻発している.本論は,自然災害に対する高齢者の防災意識および土砂災害リスクに関する研究成果である.佐賀県小城市(人口4.6万人,高齢化率20.9%)に居住する65歳以上の自立生活者を対象に,自然災害に対する防災意識に関する43項目のアンケート調査を実施した.高齢者は,気象情報や市役所等からの災害情報を気にかける習慣があり,なかでも風害や浸水被害への関心が高い.それは,彼らの防災意識が,過去の風水害の被災体験に強く起因するためと考えられる.人口動態と土砂災害危険箇所の位置関係を調査したところ,中山間地域には土砂災害による孤立リスクを抱える高齢化集落者が多数確認されたものの,高齢者の土砂災害への危機意識は低いことが判明した.そのため,地域生活環境に即した防災対策の拡充に加え,住民の防災意識のさらなる啓発が必要である.