老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
原著論文
高齢者の転倒恐怖と身体活動を関連づける要因の検討
―― ミディエータとしての転倒関連セルフ・エフィカシーの役割 ――
前場 康介藤澤 雄太満石 寿飯尾 美沙竹中 晃二
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 32 巻 4 号 p. 405-412

詳細
抄録

 本研究では,転倒恐怖が高齢者の身体活動実践に及ぼす影響,および両者を関連づける転倒関連セルフ・エフィカシー(fall-related self-efficacy ; FSE)のミディエータとしての機能について検討を行った.在宅高齢者164人を対象として質問紙調査を実施し,FSE,転倒恐怖,および強度別の身体活動時間についての回答を得た.構造方程式モデリングによるパス解析の結果,転倒恐怖が各強度の身体活動へ与える影響は,中強度の身体活動,歩行活動,平日座位すべてにおいて有意であった.さらに,転倒恐怖と各身体活動との関連におけるFSEのミディエータ機能を検証した結果,転倒恐怖から各活動への直接的なパスはすべて有意性を失い,FSEがミディエータとして作用することで強い影響力をもつことが示された.高齢者の転倒を予防,低減させる試みにおいては,個人における恐怖そのものの低減に加えて,FSEや社会的資源を視野に入れることも重要になると考えられる.

著者関連情報
© 2011 日本老年社会科学会
次の記事
feedback
Top