本研究の目的は,施設の移転時における入所者への支援方法を明らかにすることである.新築移転した養護老人ホームの入所者25人を対象に,抑うつ,孤独感,他者とのかかわり,居室ですごす時間等について,訪問面接調査を行った.調査は移転2週間前,移転2週間後,1か月後,3か月後の計4回行われ,経時的変化を比較した.
その結果,抑うつと他者とのかかわりは,調査期間を通じて統計的有意差が認められなかった.孤独感は移転2週間後から上昇したものの,3か月後に低下しており,一時的に入所者の孤独感は強くなっていた.一方で,居室ですごす時間は移転2週間後から3か月後にかけて継続して増加していた.
以上より,移転前の事前準備のみならず,移転後の早い時期から入所者の人間関係作りや居室外ですごす時間の確保について,意図的に取り組む必要性が示唆された.