2019 年 41 巻 1 号 p. 9-17
本研究は,中高年女性の就業と介護の相互の関係を検討することを目的として,厚生労働省が2005年・2006年に実施した第1回・第2回「中高年者縦断調査」データを探索的に分析した.まず,第2回調査時点(T2)での介護の開始についてのロジスティック回帰分析を行ったところ,就業の有無と介護の開始との間に負の関連がみられた.就業者に限定した分析の結果,就業時間と介護開始との間に負の関連がみられる一方,就業形態や収入と介護開始との間に関連はみられなかった.次に,T2の就業時間の重回帰分析の結果,就業女性のうち介護開始者には,介護をしていない者に比べて,就業時間が有意に減少する傾向がみられた.結果から,就業時間をのぞけば,就業状況(就業形態や収入)の異なる就業女性間で介護を担う確率は変わらない一方で,就業女性が介護を担うことは就業の停止または就業時間の短縮といった対応を伴う傾向にある可能性が示唆された.