本研究の目的は,援助ができる関係の構築が困難な認知症高齢者とその支援者に対して,ソーシャルワーカー(SW)が対人援助論に基づき実施した援助によって,援助ができる関係が成立した2事例への援助内容と成果について記述的に明らかにすることである.対象者は,援助関係の構築が困難な認知症高齢者とその支援者の2事例である.方法はSWが援助を実施し,参与観察法を用いてデータを収集し記述現象学の手法を用いて分析した.かかわりを拒否され支援できずスピリチュアルペインに苦しむ支援者にSWが傾聴を行った.そして傾聴を通して得られた支援者の気がかりを手がかりに,認知症高齢者本人にも傾聴を行った結果,気がかりを聴いてもらえた認知症高齢者本人と気がかりを気遣うSWの間に援助ができる関係が成立した.またSWと支援者にもサポートができる関係が成立した.援助関係の構築が困難な認知症高齢者の援助には,傾聴が有効であることが示唆された.