単身男性中高年者の将来展望を抑制する心理的要因を明らかにすることを目的とした.インターネット調査会社に登録している50〜79歳までのモニター1,200人を対象者とし,オンライン・アンケート調査を実施した.因子分析の結果,将来展望の意識には「将来諦め・放棄」と「将来不安」の2因子が抽出された.「将来諦め・放棄」と「将来不安」を従属変数,年代,世帯状況および性別を独立変数とし,健康感,主観的経済状態,仕事の有無を共変量とする3要因共分散分析を行った.その結果,年代にかかわらず単身男性中高年者は,将来諦め・放棄が有意に高いことが示された.一方で,60代において単身男性中高年者の将来不安は,単身女性中高年者より有意に低いことが認められた.こうした結果から,単身男性中高年者は中年後期から高齢期に至るまで将来に対する展望を諦める意識が強く,そのことにより将来の生活に向けた準備が抑制される可能性が示唆された.
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